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Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【オリキャラ募集中】 ( No.190 )
日時: 2015/06/01 21:57
名前: 雪兎 (ID: VIeeob9j)

第七十二話 <何でもアリな体育祭編>

かくして。

借りもの競争、最後の戦いの火蓋は切って落とされた。

熱い視線が注がれる中、大注目選手のジークは、軽々と5歩くらいでカード出現場所にたどり着いて見せた。観客の一部から、ほぅ、とため息のような歓声が漏れる。

なぜって、ジークの動きには一ミリの無駄もないからだ。それほどまでに洗練されていて、美しい。

…あいつは昔からそういう奴だったなあ。私ができないことでも軽々とやってみせて、何度も助けられてきた。


少し切ない思いでジークのほうを見ると、……って、アレ!?


「よう、フィリア」


いつの間にか、あのニヤニヤ顔が目の前にあった。

当然ながら、白チームは大混乱である。観客席からもざわめきが漏れている。

「ジ……ジジジーク!?あんた、一体何やって」

言いかけた言葉を遮るように、ヤツはカードを鼻の先に突き付けてきた。


「…?『会場で一番輝いているもの』…って、何これ。ぎゃあっ!」


読み上げ終わるとほぼ同時に、体が宙に浮く。「ま、そういうわけだからさあ。ちょっと攫われてくんない?姫様」

ジークにお姫様よろしく抱え上げられたのだと気づいた時には、白チームのみんなは20メートルほど後方にいた。

「フィリアがあああぁぁぁ!!」と、エリオット君が頭を抱えているのが視界の隅に映る。そして、きゃあきゃあという女子の黄色い歓声。


「あっははっ、お前軽すぎ。ちゃんと食ってんの?」

「なっ…!」


目線もあわさずに上から降ってくる幼馴染の声。一般的にはこれは褒め言葉に当たるんだろうが、こいつに言われるとすごく腹が立つ…!

Tシャツ越しに触れる、薄くも引き締まった筋肉。腰とひざの裏を優しく支えている、細くて大きな手。


ドクン。


な…何よもう。顔が、熱い…!


風を切る音だけが響く、二人きりの世界。そうっと、ジークの顔を下から覗く。

シャープな顎のラインと整った鼻梁。よくよく見てみたら、こいつも割と整った顔してたんだな…。


そんな事をぼうっと考えていると、スッと足が地面についた。どうやら、いつの間にかゴールしていたらしい。

思わずへなへなと地面にへたり込んだが、今更ながらに恥ずかしくなって、ジークをキッと睨み付けた。

「もう…あんたはホントに、いつもいつも…!」

プッ!っと、いきなり吹き出すジーク。「な、何よ!」

「…っはははっ。お前さ、俺に見とれてたろ?」

は、はあ!?そんな訳……あ、でもちょっと…。


「マジ、そういうとこかわいすぎ。狙ってんの?」


いきなり耳元でささやかれ、ひゃっと飛び上がる。そんな私を見てまた笑ってから、

「じゃあな。驚かせて悪かった」

そういって、手を振りながら遠ざかっていくジーク。……もう、


「バッカヤローーーっ。」

本当に!大っ嫌いなんだから〜〜!!

          次回、借りもの競争決着つきます。お楽しみに☆