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- えっ、今日から私も魔法使い!?【参照2000突破感謝!!】 ( No.228 )
- 日時: 2015/10/13 19:25
- 名前: 雪兎 (ID: VIeeob9j)
第九十一話 <波乱のお見合い編>
「……フィルっち、単刀直入すぎィ……」
リリアンが、ガチガチに笑顔を引きつらせている。その隣ではエリオット君とリュネが頭を抱え、その後ろではジークが必死に笑いをこらえていた。
フリン公爵は少しの間目を丸くしていたが、すぐに人のよさそうな笑みを取り戻した。
「わははは!リュネットのご友人は、実に面白い方だ。この館に来たのは、そのためだったのですな」
「は、ははは……」
私は恥ずかしいやらほっとするやらで、ただ笑うことしかできなかった。と、とりあえず、リュネのお父さんが優しい人で良かったよ。
「———しかし。それにはお答えできませんな」
フリン公爵は、急に真顔になって言った。そこには、貴族としての威厳や、有無を言わさぬ迫力があった。———でも、ここまで来てあきらめたくない!
「そこをどうにか。……何か、何か別の方法はないんですか?」
「残念ながら。……———いや?あるとすれば、一つだけ」
その言葉に、ほぼ諦めかけていたみんなの表情が変わった。「そ、それは何ですか!?」エリオット君が、喜々として身を乗り出す。
「———し、しかしですな。これは危険な————、」「……ふふ。いいではないですか。せっかくここまで来てくれたのです、お話くらいなら」
ふんわりと笑顔を浮かべるエレオノーラさんに背中を押されるように、フリン公爵は渋々といった感じで話し始めた。
その内容を簡潔にまとめると、こうだ。
・コーカー家は現在、事業が傾いており、存続が危ういこと。
・そのため、やむをえずお見合いをしなければならないこと。
・しかし、コーカー家の秘宝である、60カラットのイエローダイヤモンド(価値にして30億円)を売却すれば、財政は立ち直るかもしれないということ。
「だがしかし、これには問題がありましてな。先代当主が、盗まれてはいけないと、地下迷宮の奥深くにこれを隠してしまったのです。部下がなんども取りに行こうとしたのですが、誰一人目的を遂げられたものはおらず……」
あああ……まずい。こんな話を聞かされたら、奴が黙っているはずがなく————。
「————なんだ、面白そうジャン。仕方なく来てやったけど、暇つぶしくらいにはなりそうだぜ」
チロリ、と舌なめずりをするジーク。無意識にか、首のペンダントに手がかかっている。
「い、いや、だがね。大の大人でもどうにもならなかったものを、君たちのような子供が……!」
「———大丈夫、父様。……私たちもう、子供じゃ……ない」
「おおっ、よく言ったねリュネっち♪」「うんうん。剣持ってきておいて良かったよ〜」
「みんな……!」
————ありがとう、みんな。最後の一押しは、私の仕事だ!
私はできるだけ目に力を込めて、公爵を見つめる。
「———この通りです、フリン公爵。どうか私たちに、挑戦させてはいただけませんか?」
言葉を渋っているフリン公爵の肩に、手が置かれた。
「エレオノーラ……」「あなた。これでもうわかったでしょう、この子はもう一人ではありません。この子を守ってくれるだけの力を持った、そんな友達ができたのです」
エレオノーラさんはゆっくりと愛おしそうに、まるで母親のように私たちを見つめて、
「———私たちが出来なかったことを。この子たちなら、出来るんじゃありませんか?」
うっすらと涙を浮かべ、夫の顔をしっかりと見つめながら、言い切った。
……そして。フリン公爵はついに、ため息交じりに言った。
「————そうだな。お前とリュネットに言われては、どうすることもできまい」
私たち五人は、そろって顔を見合わせる。当然、みんな満開の笑顔だ!
「————よし、行こう。私たちならきっと、出来るよッ!」
次回、第九十二話。お楽しみに☆