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えっ、今日から私も魔法使い!?【参照3000突破感謝!!】 ( No.244 )
日時: 2015/11/30 23:44
名前: 雪兎 (ID: VIeeob9j)

第九十五話 <波乱のお見合い編>

右の道を進んでいたリリアンとエリオットは、先ほどから何か違和感を感じていた。

「ねえエルちん、これって……」

壁に張り付いているのは、何かの植物のツタだった。———こんな場所で、植物が成長することはありえるのだろうか?

「ツタかあ。まあダンジョンにはお似合いの気もするし、そんなに気にすることは無いかと………」

その時、エリオットはハッと顔を上げた。シュルシュル、シュルシュル……と、なにかが地面を這うような音が聞こえてきたからだ。

何だろう。何か嫌な予感がする。何か、何かが、



——————来る。



その直後、


「きゃあっ———!」

「リリアンさん!?」

強い力で、リリアンの体が引っ張られた。見ると足に、植物のツタが絡みついている。そしてそのまま、引きずり込もうと蠢く。

エリオットは急いで、風魔法で断ち切った———が、暗闇の奥からは何本ものツタが執念深く伸びてくる。

「エ、エルちん……早く逃げよう!」「あ、ああ!」


二人は走り出す。———が、そんな二人の前をズダンッ!と何かが塞いだ。———またもあのツタだ。「うそ、どうすればっ」

エリオットは、ゴクリとつばを飲み込むと、
「……いいかい。僕が合図したら、一気にあの先の角を曲がるんだ。そして、他のみんなにこのことを伝えつつ、できれば合流してほしい」

「でも、エルちんはっ」「僕なら大丈夫。じゃ、行くよ」


———リリアンは分かっていた。さっきから、エリオットの体はぶるぶると震え、止まらない汗が額で光っていることを。

大丈夫じゃないことくらい、分かっている。でも、


「OK、任したよ」「もちろん。さあ、振り返らないで」

お互いに視線を交差させ、ニヤッと笑う。いつも気丈なリリアンの目には、大粒の滴がたまっていた。


「3、2、1———今だ!ウインド・ソードッ!!」


リリアンが走り出すと同時に、エメラルドグリーンの光をわずかに帯びた風の剣が、ツタを切り裂いた。エリオットはふう、と息を吐く。まさかこんなところで、練習中の必殺技が役にたつとは。

————ちらりと、リリアンの走っていった方向に目をやる。
女の子を泣かせてしまった。父さんに叱られてしまうな……。

やれやれと一人反省しつつ、後ろを振り返ったエリオットは、戦慄することになる。


「これは————ッ、」



次の瞬間には、エリオット・ロジャースの姿はもうそこにはなかった。

                 
                 次回、第九十六話。お楽しみに☆