コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- えっ、今日から私も魔法使い!?【参照3000突破感謝!!】 ( No.253 )
- 日時: 2015/12/27 00:41
- 名前: 雪兎 (ID: VIeeob9j)
第九十七話 <波乱のお見合い編>
私はいまだ動けず、その場に立ち尽くしていた。
助けなければ。———そう思えば思うほど、体は固まり、動かなくなっていく。
「——————ぁ」
怖い。
よろめいて壁に手をつく。このままみんなと、二度と会えなかったら———。何より武器も持たない自分が、どうにかできるわけがない。
「……自分じゃ何もできない、って?」
「え?」
まるで私の心を見透かしたかのようなリュネの声に、私ははっと顔をあげた。振り返ると、突き刺すような金色の瞳と目が合った。
「……どうしたの。フィリアらしくない。……私の知ってるあなたは、うっとおしいくらいおせっかいで、……何事にも挑戦しようとする、馬鹿な女の子」
私は目を見開いた。だって———こんなにリュネがしゃべるのを、初めて聞いたからだ。
「今まで通り。進めばいい。……立ち止まったら、僕が背中を押す。失敗したら、支えてあげる」
なんて、馬鹿な事考えてたんだろ私は。
くよくよしてる時間なんてなかったのに。私にできることは————
「前に進むこと!!」
行こう、リュネ!と、私は白く細い腕をつかんだ。走り出すと、もう恐怖は消えていた。決意が、想いが、見えない何かが背中を押してくれる。
☆
リュネットは、手を引かれながら少し笑った。
「戻った。……ちょっと単純すぎ」
☆
もうどれくらい走っただろうか。一向に、ジークとは合流できていない。
あきらめちゃダメ!早く、早くっ。
角を曲がって、また角を曲がって、とにかく走り続ける。……と、
ギャアアアアァァ!と、「何か」の断末魔のようなものが聞こえた。それは人の声とはいいがたく、全身の毛が逆立つような感覚を覚えた。
「うわっ、何ッ!?」「……どうやら、例のバケモノみたい……」
そういうとリュネは突然、私の前に立ちふさがった。腰から二丁の拳銃を引き抜き、構える。
するとまた、暗闇から何本ものツタが鞭のように伸びてきた。リュネはそれを恐ろしいほど正確に撃ち落としていく。
「どうすれば……」何か突破口が必要だ。フィリアがここを通れるように。———だが、姿が見えない相手にどうやって。
その時、暗い洞窟内に、明るい声が響いた。
『あー、えっと、聞こえてますかあ』
「「?」」
恐らく、私たちと同じくらいの年の女の子の声だろう。『弱点は炎と光。これで分かりますよね?じゃあ、長くは話せないのでこれで失礼します。健闘を祈ります』
ブツリ、と突然声は途切れた。私とリュネは顔を見合わせる。
「今のって……」「———賭けてみるしかない。まっすぐ走って、立ち止まらないで」
「え、でもリュネはっ」「いいから行く。……助けるって決めたんでしょ」
—————うん、と。その言葉は驚くほどすっきり、喉からこぼれ落ちた。だから私は走った。何も無駄にしたくないから。
————だから私は走った。後ろから小さくうめき声が聞こえても、銃声がピタリと止んでも……振り返らなかった。そう決めたから。
「それで……いい、のよ。フィリア」
[リュネット脱落。残り二人]
次回、第九十八話。お楽しみに☆