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- えっ、今日から私も魔法使い!?【参照4000突破感謝】 ( No.272 )
- 日時: 2016/03/25 17:36
- 名前: 雪兎 (ID: VIeeob9j)
第百二話 <波乱のお見合い編>
私は手にした剣を持ち直すと、お化け植物に向かって駆け出した。
まずは横に一閃。これだけで、かなりの数のツタが切り落とされる。
「ギョエェェ!」
次に、お化け植物が奥の手と言わんばかりに大量のタネを吐き出してきた。数が多い……避けるのは少し危険かも。
私は左手を前に突き出す。次の瞬間、半透明のシールドが現れ、私の周りを半円状に囲む。
(まだ半円が限界……。きっと、瀞龍本来の力の半分も出せてない。——でも)
体が軽い。地面を蹴るとすぐに加速するし、こんな重たそうな剣を振り回しても全然疲れる気配がない。それに、誰に教えられたわけでもないのに、力の使い方が分かるのだ。まるで、今まで使い方を忘れていただけのように。
ちらりと視線を横に向けると、うつぶせながらなぜが悔しそうに下を見ているジークの姿があった。——きっとジークのことだから、「女に……しかもフィルなんかに助けられるなんて、屈辱だ!」とか思っているのかもしれない。
でもそれでもいいのだ。今まで助けてもらっていた分、きちんと恩返しをしなければ。まだ力に対する恐怖もとまどいもある。でも、仲間の顔を思い浮かべるだけで勇気がわいてくる。
「そろそろ終わりよ……目玉お化け!」
私は叫ぶと、トンッと軽くジャンプした。それだけで、私の身体は一気に5メートルほど真上に飛び上がる。
「私の仲間を返しなさい——龍神招来(りゅうじんしょうらい)!!」
そう言いつつ薙ぎ払った剣の先から、純白の光が溢れだす。その光は瞬く間に巨大な竜の形をとると、お化け植物に向かって襲い掛かった。
「ギョエエェェ!!」
☆
「はあっ、はあっ……」
部屋中を包んだ白い光が消えると、私は床にへたり込んだ。
だが、枯れ果ててしなしなとしおれたお化け植物の隣に、横たわる三人を見つけ、すぐさま立ち上がって駆け寄った。
「みんな、みんな!目を覚まして、みんな!」
三人のほおをペチペチと叩く。すると、リリアンが「ん……」と呻きながらうっすらと目を開けた。
「フィ、ルっち……」
「——リリアン!」
私は、親友の身体をしっかりと抱きしめた。握っていたはずの剣は、いつの間にか消えていた。
「あ、りがとう。フィルっちが、助けてくれた、んだよね」
「……僕も、聞こえてたよ」
「なかなか、やるのね……フィリア」
「みんな!」
三人の視線を浴びて、なんだか恥ずかしくなった私は下を向いた。
「……ううん。私だけの力じゃないから」
「そーそー。この俺もばーっちり活躍したんだぜ?」
「ジーク、あんたはまたっ」
——まったく、この男はっ。
後ろから近づいてきたジークをグーで殴ってから、私ははっと気づいた。
「血が。あんた、ボロボロじゃない!」
よく見ると、立っているのがやっとの状態のようだった。首にはツタの跡が真っ赤に残っているし、抑えた腕は変な方向に曲がっている。
「た、大変だ!すぐに手当てしないと——」
「んなことはいいんだよ。——それよりお前ら、ここに来た目的忘れてね?」
ジークに言われ、私たち四人は顔を見合わせる。
「「コーカー家の秘宝!!」」
「どっ、どーすんのぉ?あたしてっきり、豪華な宝箱に入ってるもんかと〜」
「僕、ここまで来て骨折り損はごめんだよ!?——あ、ジーク君は、言葉の通りになっちゃったけど」
私たちが慌てていると、急にリュネが立ち上がった。そして、さっき倒したはずのお化け植物に近づいていく。
「あっリュネ、まだ危ないよ」
静止の声も聴かず、リュネはお化け植物の前に立ち止まると、躊躇することなく口の中に手を突っ込んだ。
「うええ〜……」
「ちょ、リュネットさんっ」
みんなが慌てる中、ジークもヒュウッと口笛を吹く。
戻ってきたリュネは、握っていたこぶしを開いて見せた。覗き込むと、そこには巨大なイエローダイヤモンドがキラキラと輝いていた。
「すっごーいっ、こんなの見たことないよっ」
「……あの植物が秘宝の番人……で、今まで持ち去ろうとした者たちを気絶させて……地上に送り返してたみたい」
「へえ〜、そうだったんだぁ。これにて一件落着♪——ところでぇ、あたしたち一体どうやって帰るのぉ?」
「「……。」」
次回、第百三話。お楽しみに☆