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Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【募集あり】 ( No.43 )
日時: 2014/09/28 23:00
名前: 雪兎 (ID: hqWYiecP)

第五話

あっという間に一日目が終わった。

私は食堂で夕食を摂ると、寮にある自分の部屋へと向かった。

「ここかな・・・207号室。」

ドアを開けると、そこは高級ホテルの一室かと思えるような超豪華な部屋だった。

「なんっ・・・じゃこりゃ。」

そこは赤を基調とした部屋で、時々アクセントとして白い家具が置かれていたりした。

でも寮部屋に赤って・・・どうなのよ。

内心そうつぶやきながらも周囲を見回してみると、家を出るときに持ってきたピンク色のトランクが置かれていた。

「あっれー!そういえば入学式の前に、スーツ着たおじさんに渡したんだっけ。」

私はトランクに駆け寄ると、ロックをはずして開いた。

すると。

詰め込まれている日用品よりも先に、あるものが目に入った。

「これ・・・」

トランクの縦の長さいっぱいに入っていたのは、柄に赤い石のはめ込まれた長剣だった。
鞘は茶色で、剣を抜いてみるとよく手入れされた銀色の刃が姿を現した。

「すごい・・・きれい。」
私は魅入られたように、その美しい剣を見つめていた。



「フィルっち〜?いる〜?」

「っ!?」

ハッと気づいたときには、私は剣を抜いた体勢のまま座り込んでいた。

「い、今何時・・・?」

慌てて時計を見ると、さっきから20分も経っていることが分かった。

「私・・・どうして?」

20分の記憶が無いことに戸惑っていると、ドアをバンバンたたく音が聞こえた。

「フィルっち〜?もしかしていないのぉ〜?」

「あっ、はい、はーい!いるよー!」

急いで扉を開けると、そこには今日知り合ったばかりのリリアンが立っていた。

「よっ!遊びに来ちゃった〜♪あがっても良い?」

「うん、いいよ。」

リリアンは中に入るなり、「すご〜い!」と声を上げた。

「え?何が?」

「いやいや、特に深い意味は無いんだけどさ。あたしの部屋は、全体的にピンクって感じだったからぁ〜。すごいね!部屋によって配色がちがうんだあ〜!」

「へ、へえー。・・・はは、何か赤って落ち着かないよねー。ピンクがよかったなあ。」「そうかなあ?」

なんて他愛のない話をしていると、リリアンが長剣に興味を示した。

「えっすごーい!これフィルっちの武器!?ほー、かっこいいですなあ!」

「え、そうかな。」

正直自分も今見たばかりなのでなんとも言えなかった。だがそれをリリアンは謙遜だと思ったらしい。

「いやいやー、すぅごくきれいだよー、この剣!あたしが欲しいくらいだよ〜、なんつって!」

「ははは、あげないよ〜!」

なにも特別なところのない、平凡な会話の数々が続いた。だがその会話は、初めての環境で心細かった私の心を、徐々に溶かしていってくれたような気がする。

話すこと、十分。

リリアンが、母が音楽家、父は楽器製造会社社長、兄姉も音楽が大好きな音楽一家であることなど、お互いのいろいろなことを教えあった。

そして、そろそろ寝ようかと、会話をやめた次の瞬間。

「きゃああああああ!」

悲鳴!?・・・誰の!?

今は、そんなことを考えてるヒマはない!

私とリリアンは、顔を見合わせ、うなずくと、すぐさま部屋を飛び出した。

隣の部屋のドアを開けると、茶色い髪の子がうずくまって震えていた。

「どうしたの!?」

私が声を掛けると、女の子は緩慢な動作でこちらを振り向き、ゆっくりと壁を指差した。その顔には恐怖が張り付いていた。

女の子の指先を見ると。

凍っていた。

いや、正確には氷が張り付いていると言ったほうが良いだろうか。

縦横2メートルくらいの面積の壁が、氷に覆い隠されていた。

「どうしたの・・・これ」

私が唖然としながら問うと、女の子は震える声で切り出した。

「私も分からないの。・・・ただ、私魔法が使えなくて。だから魔法が使えるようになりたい、って念じたの。そしたらいきなり、指の先から・・・」

悲鳴を聞きつけたのか、数人の生徒が集まってきていた。

「・・・・・・。」

リリアンは黙って、泣きじゃくる女の子の背中をさすっていた。

私はそんな二人を、見守ることしかできなかった。



あとで聞いた話だが、騒動の前後で、やはり同様の事件がおきていたらしい。
同様の事件というのは、同じく魔法の使えない生徒たちが、無意識に魔法を発動させてしまった、というものである。

いったい、何がどうなってるの・・・?

                    次回、六話。お楽しみに。