コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【募集あり】 ( No.62 )
- 日時: 2014/10/10 22:45
- 名前: 雪兎 (ID: hqWYiecP)
第八話
「あの、エリオット君。改めてありがとう。・・・っていうか、君って二刀流なんだあ。すごいね!」
私が二本の剣が刺さった腰の辺りに顔を近づけると、エリオット君はメチャクチャ顔を赤らめた。
「ふぇっ!?・・・そ、そそ、そんなことないってバ!あは、あはは。こ、こんなの訓練すれば簡単だ、し・・・?」
・・・どうも、女性に耐性がないみたいだ。顔からして、心の中では「もうちょっと離れて!」と思っているに違いない。
私が顔を離すと、エリオット君は少しホッとしたようだった。
それから教室に帰るまでの間、私とエリオット君はいろいろな話をした。
「僕の家は、みんなとは違って普通の家庭なんだ。母さんや僕、弟や妹たちを食べさせていくには、父さんの給料ではいずれ足りなくなる。だから、僕にはこの学園を卒業したという肩書きが必要なんだ。」
「肩書き?この学園ってそんなにすごいの?」
「え、知らなかったの?えと・・・フィリアさんも、奨学生なら知っておいたほうがいいと思う。この学園を卒業すれば、それだけで大手企業への就職がうんと簡単になるんだ。」
「呼び捨てでいいよ。へえそうなんだあ。ありがとう、教えてくれて。」
するとエリオット君は、またドキッとしたように顔を赤らめてから言った。
「あ、あはは。そんな感謝されるようなことでもないって。」
☆
「じゃあ、僕は職員室に用事があるから。また教室で、・・・フィリア。」
「うん。じゃあね!」
なんか親近感が沸いたなあ。仲良くなれそうかも。
心の中ではしゃぎながら、私は教室への道を急いだ。
☆
一方その頃。
二十畳ほどの豪華な、それでいて暗く湿った空気の部屋に、二人の人影が。
一人はソファに、もう一人は怪しく光る水晶玉の前に。
そしてその水晶玉に映し出されているのは、紛れもなくセント・ブラックウェル学園だった。
「・・・あーあ、平和ボケした奴らがウジャウジャ・・・あいつらうまくやってっかな・・・なあ、ルカ?」
「さあ、どうかな・・・ねえ、ぴょんちゃん。」
黒いコートに身を包んだ少年の問いかけに、ルカと呼ばれた灰色の髪の少年(いや、少女にも見える)は白いウサギのぬいぐるみを撫でながら、曖昧な答えを返す。
黒いコートの少年、アーク・コルネリウスはそれ以上ルカに興味を示さず、ただ一人拳を握り締め、つぶやいた。
「フリト・・・。」
☆
教室に戻ると、ドアのところにジークが寄りかかっていた。
「何・・・どうしたの?」
「オマエさ。さっき話してた茶髪の男、アレ何?」
「何って・・・お友達のエリオット君だよ。私ともう一人の女の子を助けてくれたの。なんでそんなこと聞くの?」
「・・・・・・べっつにー。」
?・・・なんなんだ、よくわかんない奴だなあ、まったく。
首をかしげたフィリアが教室に入ると同時に、ジークがつぶやいた。
「・・・呼べばいつでも、助けに行くのに、な。」
☆
ついに、対抗戦のチーム分けが発表された。なんとこのチーム分け、クラスなどまったく関係なしに、ランダムに決められるのだという。なにか意図でもあるのだろうか?
「んーっと次は・・・Cチーム。ジーク・オースティン、フィリア・ヴァレンタイン、リリアン・ウォルトン、ハク・ライディル、リュネット・レオ=コーカー。・・・えー、次・・・」
何なのよ・・・またジークといっしょなんて。
それにしても、エリオット君もカイル君も別チームか。ちょっと残念かも。
思案している私を見て、ジークはなにやら微笑を浮かべて「フッ」と鼻だけで笑った。それもめちゃくちゃ悪人面で。
・・・私はさりげなく一歩距離を置くことにした。
このとき、平和な学園の裏側で黒いモヤがかかり始めていたのだ。
もちろんそのことを、私たちはまだ知らない。
次回、第九話。お楽しみに。