コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【募集あり】 ( No.75 )
- 日時: 2014/10/29 16:29
- 名前: 雪兎 (ID: hqWYiecP)
第十話
対抗戦当日の朝、同チームどうしでの顔合わせがあった。
各チームとも、初めにそれぞれ校内の特定の場所に集まるよう言われていたので、私たちも指定された[校舎裏]に集まった。
時間に遅れたのはジークくらいで、他のみんなはちゃんと時間通りに集まった、…はずだったのに。
そこに、リュネットの姿はなかった。
「寝坊したー。」と頭をかきながら現れたジークの後ろから、ひょっこりあの白髪が見えるんじゃないかと、期待していた。
期待…してた。
やっぱり、私と話をしたくらいじゃ無理だったかあ。
考えてみれば分かることだった。昔から同学年の友達も少なかったし、説得なんて無理だったわけだ。
ふう…力不足だなあ。
☆
一方、フィリアが落ち込んでるときのリリアンは、もちろんフィリアの異変に気が付いていたわけで。
(どうしよう、もしかしてフィルっち落ち込んでるぅ!?ここは、親友のあたしが慰めなくてはっ!)
グッ!とガッツポーズを決め、満面の笑みで話しかける。
「おほほー、フィルっちー?そんなに暗い顔してどうし…」
「よー、フィル。」
「!?」
リリアンの言葉をさえぎったのは、
ジ、ジーク君…。
「うふふっ。」
…なるほど、君も気づいていたのだねえ、ジーク君。
リリアンは心の中で満足そうにうなずき、
あとはまかせたよ、…王子様。
二人を見守ることにしたのだった。
☆
「よー、フィル。」
「わっ…あんたか。何よ?」
「暗い顔してどーしたんだっつー話よ。…なんか静かだと気持ち悪りぃ。」
そういって、私の髪をわしゃわしゃとかき回す。
「ぎゃあ!何すんのよっ。ていうか気持ち悪いってどういう意味よ!」
私が平手を食らわそうとすると、ジークはそれをさらりと受け流しながら言った。
「おおっと、悪ぃ悪ぃ。…つーか、」
ふいに優しげな表情になって、
「顔、戻ったな。やっぱそっちの方がいいわ。」
……!
「もうっ!」
なんだか照れくさくなって、私は今度こそ、ジークのお腹に拳を食らわせた。それでもジークは全然痛がってなくて、「ハハハ」と笑うだけだった。悔しい。
…悔しい。
あいつはいつもそうなんだ。妙なところで勘が鋭くて、毎回私を救ってくれる。いつだってそうだった。
…もう。
「あーでも、オマエの怒った顔が一番好きだな。ププッ…おもしろいし。ああ、思い出すと笑える…!」
…。
そう、いつもいつもいつも、こういう感じになるんですよねえ!コイツは昔からぁ!
「あのー、すみません…」
突然、誰かに話しかけられた。見ると、小柄な男の子だった。それに、私に話しかけたんじゃないみたい。視線がジークの方を向いている。
この子は、
「えと…ハク・ライディル君?」
すると男の子は、パアッと顔を明るくして言った。
「そうッス!俺の名前覚えていてくれたんスね!」
本当に小柄な男の子で、私よりたぶん身長が低い。薄い茶色の髪にゴーグルを着け、浅黒い肌が健康的だ。
緑の袖無しパーカーの下に白いTシャツ、ぶかぶかの短パン。そして橙色の瞳がキラキラと輝いている。
どことなく幼さを感じさせる子だった。
ジークは一人だけ複雑そうな顔をしている。きっとこの子の名前が思い出せないのだろう。
私はこっそりジークに耳打ちする。
「この子、知り合いじゃないの?」
「知らねェ。見たこともねえ。」
「えっ?じゃあ何で…」
すると、
「ジーク先輩!」
えっ!?『先輩』って…同学年じゃないの!?
「俺、ずっとジーク先輩に憧れてたんッス!今回は一緒のチームになれて光栄ッス!!」
そしてガッとジークの手を握り締める。
「お、おう…。」
状況がつかめないんだけど…え?この子ジークに憧れてるって言ったの!?
まずは一番気になっていることを聞くことにする。
「えっと、ハク君は、その…高等部じゃないのにどうして?」
「ああ、それはですね。毎年高等部の対抗戦には、中等部から代表として何人かが参加するんスよ。」
へえー。
代表に選ばれるからには、この子もそれなりに強いのかな?
「あと、尊敬する相手は選んだ方が良いと思うよ…。」
するとハク君は、「どうしてッスか?」ときょとんとした顔で聞き返してきた。
…もう手遅れだな。
そのとき、校内放送が流れ始めた。
次回、第十話・後編。いよいよ対抗戦。お楽しみに☆