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- Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【募集あり】 ( No.81 )
- 日時: 2014/10/29 16:36
- 名前: 雪兎 (ID: hqWYiecP)
第十三話 <対抗戦編>
ミーナと刃を交えていたフィリアは、視界の隅でリリアンが森の奥に入って行ったのを捉えた。
きっと戦いやすいように、ラゼリアをミーナから離してくれたのだろう。…本当に、できた親友だ。
そこで両者は一度、後方に飛びのいて距離をとる。
「…あんた、ただの奨学生かと思ってたら、なかなかやるわね。」
…私もミーナさんも、息は荒い。スタミナは、この感じだと私の方が上だろうか。
でも、彼女には。
「だけど、残念ながらこの勝負、私が勝つことになりそうね。だってあなたには」
そこで言葉を切ると、ミーナは片手を軽く挙げた。
手の周りにぷかぷかと浮かんだ水が集まり、一つ一つが小さな槍の形に
変化した。
「…これがないものっ!!」
セリフと同時に、小さく鋭い水でできた槍が、フィリアめがけて飛来した。
「っ、水属性か…!」
そう。私には「魔法」が無い。今ではほぼ全ての生徒が使えるようになったこのハンデのせいで、私の勝率は一気に下がることになったのだ。
避けながら打開策を考えるも、そう悠長なこともしていられなくなった。
どうやらこの槍、追尾形らしいのだ。
避けても避けても、無数の槍は執拗に後を追い回してくる。これでは攻撃すらもできそうにない。
「どうする、このまま続ける?…今降参すれば、リタイアとして認めてもらえるわ。そのまま避け続けても、私に攻撃が当たらなければ、意味が無いのよ?」
そう、攻撃が当たらなければ、意味が無い…!
さっきから攻撃の機会をうかがってはいるのだが、攻撃を仕掛けようとするとミーナがまた水の槍を出現させて放ってくるので、したくてもできずにいるのだった。
私の攻撃以外で、敵にダメージを与えられる方法。
いやむしろ、相手の…。
…そうか!
私の脳内で、何かがはじけるようにひらめいた。
上手くいく保証は無い。だけど、やってみる価値はある!
私は一度距離をとると、ミーナに向かって一直線に走り出した。
不審に思ったのか、ミーナが再び水の槍を飛ばしてくるが、スピードが無いので難なく避ける。
それに、もっと飛ばしてくれた方が好都合だ。
「確かに私は魔法は使えない。だけど…」
ミーナまであと30m。
「ピンチに追い込まれた弱者は…」
そこで一気にスピードを速める。
突然目の前に現れた私に、ミーナは驚き一瞬の隙ができた。
今!!
「余裕の強者より強い!!」
言葉と同時に勢いをつけてジャンプし、ミーナを飛び越えた。
「いきなり何を。……っ!?」
フィリアの奇妙な動きを目で追っていたミーナは、前を向くと同時に戦慄した。
先ほど自分が放っていた無数の水の槍が、眼前に迫っていたのだから。
「いやあぁぁぁぁーっ!!!」
…自らの悲鳴と小爆発とともに、ミーナは静かに崩れ落ちた。
☆
「上手く…行った?」
倒れて動かない敵を確認すると、なんともいえない感情が湧き上がってきた。
「やっ…たあ!!」
初戦に勝ったうれしさ、高揚感。勝負を終えた安堵感。
…そんな思いで注意力が散漫していたフィリアの背後で、最後の力を振り絞ったミーナが立ち上がろうとしていた。
☆
一方その頃、リリアン。
勝負に勝った彼女は、森の中を疾走していた。
フィリアのことも心配だし、早く戻らねば。
やっと、視界が開けた。別れた場所に戻ってきたらしい。
「ふぃー、フィルっち、生きてるかーい?…まあそんなのも余計なお世話かもしれないけ……わおっ!?」
リリアンの目に飛び込んできたのは、完全に油断しているフィリアと、その背後で水の槍を放とうとしているミーナの姿だった。
リリアンはとっさに指揮棒を引き抜き、叫んだ。
「フィルっち、危ないっ!!」
☆
さて、リリアンたちと合流するか。
ジークたちも心配だし、早く見に行かないと。
そのとき、聞きなれた声が響いた。
「フィルっち、危ないっ!!」
え?
何が危ないって…
!!
フィリアが水の槍の存在に気づいてとっさに剣で叩き落したのと、リリアンがミーナに止めを刺すのがほぼ同時だった。
…ミーナの姿が消え、全てが終わったのを悟った瞬間、フィリアは地面に座り込んだ。
そこに、リリアンが駆け寄ってくる。
「フィルっちー!大丈夫だったあ!?…よかった、怪我は無いみたいだねん☆」
「うん…ありがとう。私リリアンが叫んでくれなかったら、どうなってたか。」
リリアンは、えへへ、と笑ってから答えた。
「そーだねえ。人間は安心してるときが一番危ないんだよ。…フィルっちも、これから気をつけよ?」
「…うん!そうだね!」
私は元気よく立ち上がり、遠くを見据えた。
「行こう。今度は私が、みんなを助けなきゃ!」
次回、第十四話。お楽しみに。