コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ジャムのように甘く優しい恋物語 ( No.20 )
- 日時: 2014/10/01 14:24
- 名前: モンブラン博士 (ID: CMSJHimU)
アップルside
「パパ、ママ、行ってくるね」
大好きなパパとママに行ってきますのキスをして、学校へと歩き出した。
朝の気持ちのいい、少し冷たい空気を吸い込みながら歩いていると、親友のヨハネスくんに会った。
「ヨハネスくん、おはよう」
「おはよう、アムール、もとい、アップルくん」
ヨハネスくんは—彼だけじゃなくて他のみんなもだけど—彼らは僕のことを名前じゃなくて「アムール」と呼んでいる。
アムールっていうのは、愛の神を意味する言葉だけど、どうしてみんなが僕のことをそう呼ぶのか、よくわからない。
それから、ひとつ年上の先輩の徹さんは、僕のことを「フロイライン」って呼んでいる。
これは、ドイツ語で「お嬢さん」って意味だけど、僕は男の子だよ?
そのことを歩きながら、ヨハネスくんに話すと、彼はクスクス笑って、
「彼がそういうのも、わかる気がするな。だって、きみは本当に可愛いんだもん」
「えっ…でも僕、男の子だよ」
「そんなこと、言われなくたってわかっているさ。でもね、きみは人に好かれる不思議な魅力があるんだ」
「そうなの?」
「うん。そうだよ」
彼と手をつないで歩いていると、なんだかカップルみたいに思われて、少し恥ずかしい。
ヨハネスくんは、パッと見、本当に女の子みたいな外見をしている。
腰まである長い髪は、冬にはちょうどいい防寒具代わりになりそうだけど、夏はすごく暑そうだ。実際、彼は夏が大嫌いらしく、夏休みになると、いつも図書館で一日中こもって本を読んでいることが多い。
かくいう僕も、彼と一緒に図書館や本屋さんめぐりをしているから、人のことはあまり言えないんだけど。
「ねぇ、ヨハネスくん、今年の夏休みは、何して遊ぶ?」
すると彼は、顎に手を当てて、考えるしぐさをした後、口を開いた。
「そうだなあ…せっかく日本に住んでいるんだから、海に行ってみない?」
海。それは、僕たちにとってあまりなじみのない場所だ。
僕たちの故郷のドイツには海がないから、外国にでもいかない限り、泳ぐ機会は滅多にない。
だから、僕は海に行ってみたくて仕方がなかった。
「そうだね、行ってみようか」
「うん、そうしよう」
僕たちは、周りの人が聞いたら、まだ少し気が早いと思われるかもしれない夏休みの計画を立てて、胸を躍らせていた。