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Re: ムニキス ( No.38 )
日時: 2015/02/10 07:19
名前: 捨駒 (ID: gM3fL3C0)



心臓の音がバイクのエンジンの様に鳴っている。気付かれないのか、そのスリルで針をつまむ指が、汗ばんできている。
今にもたれそうな、手を洗ってタオルで拭いていないような汗に少々おかしさも感じた。
時計の針があと五回進んだら行こう。そう決めた。

……………

「よし…」

一思いに床を蹴ると、ブーツのヒールのあのカツカツという音が床に染み込んでいった。
時間は限られている。早く仕留めなくてはいけない。

まずは左足から。

「……そこかよ…」
「ッ?!」

後ろから声が聞こえたと思った。いや、確実に前にいるのに後ろから声が聞こえるなんておかしい。でも、確かに後ろから…

振り向くと誰もいない。ただ、今来た闇が見えるのみである。

……闇?

「…ロイの能力があれば、闇の中は最強なもんでね。」

あの糸のような細目を見開き、流血した眼をギラギラと光らせて女を舐め回す様にた。
自分のオッドアイとまではいかないが、随分と変わった色の瞳をしている。

「やめてよ!こんな力、僕は使いたくないんだ!信じて!貴方を殺したくは無い!」

交互に入り雑じる二つの主張に頭がおかしくなりそうである。
しかし、こんな家…見つけた奴は他にいないのか?

「俺の名はロン。体はロイだがな。名を名乗っとくのは、俺がお前を倒せる自信がヒャクパーあっからよ。他の奴は家に入るまでに俺が仕留めたからな。」
「なるほど…通り魔事件の犯人はアンタね。タカトラさんが探してたわ。」
「通り魔…?何を言うか。あれは、俺を殺した奴を探してるんだよ。人探しさ。ひとさがし。」

通り魔事件、それはこの村から約五年にわたって伝わる、決まって4日に行われる殺人事件のこと。それもあるから、女は村を出ようとしていた。

「今日がその4日…」
「ああ、満月の次の日だからな。尚更機嫌がいい。俺はな。」