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Re: ヘンケイ ( No.5 )
日時: 2014/11/02 18:28
名前: 捨駒 (ID: VbQtwKsC)



時は衰退した世紀末。

日本の三重県ばりによくわからない広さの国があった。資源豊かであり、野山を駆け回る動物たちは夜になると現れるこぼれ落ちんばかりの星空に目を輝かせ、瞬きすら惜しまれる美しい景色は誰もが一度は見ようと訪れる国だ。

いや、衰退した世紀末だからこそこの様な土地に集まるのだ。そこに元から住んでいる者は何故この国は繁栄するものかと思案し考えては唸り、あと一歩の所で消えてしまう。

一人だけはこの胸にしまっておけば、手が届かない所にあれば消えなくて済むと思い、国の秘密を知ろうと毎日を無駄に過ごしている。

「おいー!コウ?!聞こえてんのかー?あァー?」
「いじめちゃ駄目だろう?…異国の奴なんだからよぉ?」

黒髪は下水の汚ならしい色に汚され、白い肌は赤く腫れ上がる。少年は殴られては蹴飛ばされ、拘束されては水に沈められ…美しい世の中だからこそか、ここの人間の心は淀んでいる物だと少年は、髪を捕まれながら思った。

少年は名をコウといった。

五年前から引っ越してきたが、親に先立たれ近所のパン屋で仕事をしている。本当は賃金のいい王族の馬の手伝い(元々コウの一族は遊牧民であるため、馴れている為採用がかかった)のはずたが、運に見放され王族の馬を殺しかけた。そうして、コウは二度と王族の前に現れない事を誓い村外れのパン屋で働いていると言うわけだ。

自分の身を染め上げる臭い下水には耐えきれなかったが、これも運が悪いため。まだ若い身の上。少しの苦労は仕方がないと考え、されるがままである。それが、いつ嫉妬からのいじめであると気づくのかは謎にすぎない。

やられっぱなしもよくはない、ここで少年は宝石の様な美しい瞳をもった少女の大きな目を見つけ横にあった棚を蹴飛ばし、酒の瓶を落とした。
大きな音が響き、案の定、彼女は振り向き此方に近付く。

「げっ!リンじゃねーかぇ!」
「止めなさいよ!」

豪快に右ストレートを金髪に御見舞いする。

「くっ、クソ!今度は、ケツにここのフランスパンぶちこんでやるんだからな!」
「女に助けられて、ダッセーの!」

「一昨日来やがれ!」

少女は口元をへのじから優しい微笑みに変え、コウを見つめた。

「大丈夫…?コウ?」

コウは立ち上がり、少しだけ頭を下げて強ばっていた表情を緩めて笑顔を作った。

「あっ…ありがとう……リン!」

そのまま走り去って行った小柄な背中をリンと呼ばれた少女は見つめてその場を動かなかった。初めて聞いた噂の少年の声。

「運の良さ、分けてあげたいな…」

呟いた彼女の回りを、暖かな空気が駆け巡った。魔法でも使ったかの様に、その日の夜は
ても綺麗な流星がみえた。


受け取れェェ!!はるたろおォォ!!