コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

1話 №4 ( No.12 )
日時: 2014/10/19 21:16
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: SW6tVdsd)


 《あなたは、楽しくておかしな恋をしたくはありませんか? そんな時は、こんな魔法を唱えるのです──。》

 午後の授業も終わり、密かにマイブームとなっている読書の時間に入る。ちなみに、読むのは朝借りた『始めは三味線にしてやるつもりだったんです』という本。基本的に、私は本の最初の3文程度を読んで、読むか読まないか決めるが、この本はなかなか面白そうな文頭をしている。

「ホダカーレ、クラカラーレ。」

 これが、楽しくて、おかしな恋ができる魔法だという。私には到底ありえない恋。楽しくて、おかしな恋とはどういうものか……。例えば映画みたいにカエルになって……。ってそんなわけない! と、自分で自分にツッコミを入れ、本を読み進める。
 しばらくすると、私の座っているベンチの冷たさが、だんだんと伝わってくる。「ふおっ。寒い……。」と呟きつつ、周りを見渡すと、もう太陽が紅く色づき始め、木々を北風が揺らし、葉が落ちてゆく。黒く、公園にあるような丸時計を見るともう4時過ぎ。どうやら30分程度ここにいたようだ。本に愛用のカメちゃんしおりを挟み、冷気で冷たくなった鞄にゆっくりと入れる。ほぉ、手が冷える。家に帰る前に缶コーヒーでも買って帰ることにしようか。と、ベンチを立ったその時、

「あ、いた。一宮さん。」

 後ろの方から声が聞こえる。この声は……。振り向くと、そこには朝の図書委員。櫻田 秋也がいた。

「一緒に帰りませんか?」