コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

1話 №5 ( No.20 )
日時: 2014/10/23 21:09
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: SW6tVdsd)
参照: 参照100 ありがとうございます。


 突然のことで一瞬思考回路がおかしくなったが、ここは冷静でいなければいけない。

「別にいいんだけど。なんでかな?」

 ニコッと作り笑いをして多少睨みつける。これで大抵の男子は「うひゃー」とか言って逃げていくが。そんなことを考えていると、彼はびくともせず、口を開いた。

「あと、1年だからです。帰りましょう。」
「あ、待って。あと1年って? 今が1年生じゃないの。」
「それは……。なんでもないです。嫌なら1人で帰ります。」

 なんだこいつ。なんだ、この大物感。若干上から目線のようにも聞こえるが、そこは2年生。「ごめんごめん。一緒に行こ。」と言い、歩き出す。
 色が一つ一つ違う赤色のレンガでできた門を出て、右に曲がるとまたすぐに左折。横断歩道を渡り、並木道に入る。学校のすぐ前は普通に車の通る道路で、学校はT字路になった道路の2本の線が重なる部分の上というかなり面倒な立地で、学校に行くのに、並木道の方から来る生徒は、どちらかの横断歩道を渡らなければならないのだ。なんで、私はこんな学校選んだんだろう。制服につられたか?

「一宮さんの家。どこらへんですか?」
「あ、えっと。あの坂のとこのスーパーの近く。アパートなんだ。」

 彼の気配りだろうか。さっきから私の早歩き……というか私にとってはこれが普通だが、友達からは早歩きと良く言われる。まあ、とにかくそのスピードに合わせてトタトタと歩いている。そのせいか、若干『ハァフゥ』という息が聞こえてくる。ちょっと申し訳ないかな? と思い歩くスピードを落とし、かじかんだ手にハァ〜と暖かい息を吹きかける。すると彼は何も言わず、私の手をゆっくり、そしてしっきり握った。私、男の人と手を繋いだのって……お父さん以来かな。そういえば良くジャーンプとか言ってお父さんとお母さんに手を上に引っ張ってもらったっけ。なんて事を思い、思わずクスッと笑みがこぼれる。彼もなんだか……キザ? あれ。こういう人ってキザっていうんだよね。