コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 第2章 1話 №2 ( No.43 )
- 日時: 2015/01/19 11:53
- 名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: zCJayB0i)
- 参照: 長めです
◇◆◇
だから。だから1年って? 嘘だ。こんなの嘘だ。
「さっきも言っけど、とにかくここは危ないから近くの街まで行こう」
私の話を聞かない秋也君。さっきの話は納得がいかない。疑問しか浮かんでこない。
「あっ。はぁ……。花凛さんは離れてて」
「え? ねえ、私の話聞いてる? ちょっ──」
反抗したが彼に背中をドンと押され、バランスを崩す。彼は静かにその黒い目を閉じた──。
ササッ。サササッ。
何かが聞こえる。しかも大きくなる。土をはい、少しずつこちらに近付いてくる。──きたっ。
それと同時に彼は目を開け、さっきのような眩い光を放つ。ネコだ。紫の整った毛並みはさっきと何ひとつ変わらない。黒い目は彼自身にも見える。
怖い。怖い。姿もわからない〝何か〟が迫ってくる。しかしネコはというと堂々とそこに身構えている。そこにあの弱々しい秋也君の面影はない。目を見開き、長く細い尻尾でゆっくりと地をなぞり、まるで相手の動きを探っているように見える。そのときだった。一瞬にして彼の身は宙に舞った。多少だが、「くっ」という声が聞こえる。しかし、〝何か〟は動くのを止めない。姿も見せないまま、厳密に言うと見えないのだが。彼が地面に着くスレスレでまた身体を宙に上げる。抵抗のない彼はその時少し笑った様にも見えた。
彼は空中で体制を立て直し、尻尾を一振りする。すると彼の下には半透明な緑の円盤がフワフワと浮遊しながら現れ、見事に彼をキャッチした。この動きが予想外だったのか、〝何か〟は「ギュイーン」という機械音のような音を発し、ついに姿を現した。茶色く、所々にコケの様な緑がある胴体。そこから4枚の白い羽が突き出ている。まるで巨大なトンボだ。おそらく羽だけで私の身長くらいある。目はぐりっとしていて緑色。あまり好印象はいだけない。
ネコ……いや、彼は休む暇も無く尻尾をもう一振り。今度は彼の周りの地面が段々と宙に舞い、5・6個の大きな岩の塊となった。私は少し近付こうとするが、さっき押された時に足をくじいてしまったのか、足が思うように動かない。
「みゃっ」
静かに彼がそう言うと、砕けた地面が巨大トンボに向かって飛んで行く。巨大トンボもその羽を目一杯使って逃げるが、羽の先端に岩の一部が当たった。「ギューン!」と奇声を発し、巨大トンボは急上昇した。やったね!
「凄い凄い! 倒しちゃっ──きゃあ!」
身体が一瞬にして持ち上がる。足が付かない。ブンブンという羽の音が頭上で聞こえる。……助けてっ。