コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 2章 1話 №4 ( No.49 )
- 日時: 2015/01/19 19:31
- 名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: zCJayB0i)
- 参照: 参照400感謝!
巨大トンボの上は意外と快適だった。背中にまたがって、そこらにある棘のような突起をしっかり掴ぎる。前に乗った秋也君が頭をさっと撫でると、ブンブンという音が大きくなり、地上が離れていく。
空では太陽が高く上がっていて日差しが矢のように容赦なく突き刺さる。暑い。長袖、というかコートを着ている私は袖をまくるために手を離したその時、バランスを崩して体が後ろにそれ、「ああっ!」という声が漏れる。しかしその手に何かが触れた。何かはそのまま手をグイッと引っ張り、また離れた。あ、秋也君の手か。「ありがとう」と言ったが彼は前を向いている。私はゆっくり手を伸ばし、彼の肩へ。そのまま彼の背中にもたれかかった。ああ、心臓の音が聞こえる。私のも、彼のも。
どこかで聞いたことがある。赤ちゃんなんかはお母さんの心臓の音が子守唄のように落ち着くのだそうだ。彼のゆっくりな心臓の音と、私の段々と速くなる心臓の音が同時に聞こえる──。
次に私が目を覚ましたのは、彼の言葉が聞こえた時だった。
「もうすぐガクタラです。役所とかが近くにある3番街に行きますね」
半開きの目を擦り、欠伸をしながら下を見る。一面の工場風景。煙突からは色とりどりの煙が上がり、地面には人、人、人。まるで一昔前の東京だ。
「ここは7番街。もともとガクタラは工業が栄えているけれど、ここが一番発展しているところです。」
「へぇ。他にはどんな所があるの?」
「2番街は風景が綺麗ですよ。あ、これから行く3番街は中心部で色々な施設が集まっているんです。王宮もありますよ……っていうか、もう敬語は面倒ですよね」
言われればそうだ。本人が言うまで気付かなかった。
「じゃあ、敬語は止めよう」
「そうだね。まあ、私はずっとタメ口だったけど……」
敬語を止めようと直接言われた事はなかったので、若干焦ったが、一応付き合っている訳だし、変えるタイミングが無かったのかと受け止めた。