コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

2章 1話 №5 ( No.50 )
日時: 2015/01/20 17:50
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: zCJayB0i)


 巨大トンボは少し疲れてきたのか、時々キッと音を立てて飛び続ける。前に乗る秋也君は、はじめにやったように巨大トンボの頭をひと撫で。すると羽の動きが少しづつゆっくりになり、ゆっくりと地上に近づき始めた。
 本格的に地面が見えると、秋也君はこちらを向いて「立って」というように手で合図する。私が立とうとすると「まだだよ」といった具合に手でストップ。下を見ると、広い範囲で硬いコンクリートのようだ。少しづつ、少しづつ、巨大トンボが降りていく。

「3、2、1……立って!」

ノスッ!

 立てという合図と共に巨大トンボの足が地面に付く。私は立ち上がってひょいと巨大トンボから降りた。

「ギャイ航空のご利用、ありがとうございました」
「こちらこそ。パイロットさん」

 この巨大トンボはギャイというようだ。彼はギャイの体をまたひと撫でして、手をヒュッと上げると、巨大トンボは瞬く間に消えてしまった。

「蘇生呪文で生きていたからね。どうしようが僕の勝手なんだ」
「ちょっと……可哀想じゃない?」

 私がそう尋ねると、彼は「ふふっ」と笑い、

「しょうがないんだ。それより本当はドラゴンが停まる場所を勝手に借りちゃったんだ。早く逃げよう」

と笑顔で言った。私は今の彼が大学生には到底見えない──。

***

 少しの間走って、彼は「もういいね」と言った。

「そうそう。花凛さんは多分ここの言葉がわからないと思うんだ」

 言われてみればそうだ。そもそも、さっきから見ていると、ここは人間みたいなのも居れば、魚みたいにウロコの生えたのも居るし、ネコっぽいのも居る。多文化主義という奴だろうか。

「ここは東の大陸の中でも、色々な種族が集まる事でも有名なんだよ。ここの言葉、基本的にこっちではここの言葉で伝わるから」

 日本でいう東京だろうか。周りを見渡しても、家やお店がある中、露天商のような人もいる。さすがにビルはないようだ。
 彼が「とりあえず、翻訳できないとね」と言い、私の手を取りどこかへと向かう。
 家を過ぎ、大きな建物を過ぎ、お店を過ぎるが、彼はまだまだ進──。
 彼が止まった。私は危うく彼の背中にぶつかりそうになる。

「ん? どうしたの……?」