コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

2章 2話 №7 ( No.61 )
日時: 2015/02/06 21:43
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: zCJayB0i)
参照: 長めです。1200あります


「いくで。シュウ、攻撃せいや」
「わかってる!」

 私が一歩足を踏み入れると、そこはかなり大変な事になっていた。杖を持って援護をするアリシアと、ネコの姿で必死に魔法を放つシュウ君。
 戦っているのは、赤味がかった紫色をした大きなドラゴンだ。顔だけで私の胸のあたりまでありそうだ。立派な鱗が無数にあり、どれも傷が付いている、歴戦の痕だろうか。

「カリン、やっときぃはったか」
「こいつは恐らく自分の意思で行動していない。自分の身を滅ぼしてまで行動するかもしれないから、気をつけて」

 シュウ君は早口にそう言い、またドラゴンの方に顔を戻す。怖くはないのだろうか。私は……怖いのが本心だ。しかし、アリシアの、国王陛下の為にもこいつを倒さなければいけない。勿論生きたまま。

「よーし、行ける。大丈夫だ。──カリン!」

 闘魂を注入して、「おりゃーっ」と言いながらドラゴンに突っ込む。
 時間の流れがゆっくりに感じる。
 ずっと呪文を唱えるアリシアを横切り、小さな身体で勇敢に魔法を放つシュウ君をしっかり見てから離れ、赤紫の壁に近づいて行く。
 ここだ! という時に剣を力一杯引いて、一気にぶっ刺す。しかし、みすぼらしい剣はドラゴンの紫色の鱗に当たった瞬間、呆気なく跳ね返されてしまった。
「くっ……」っと思わず声が漏れる。ドラゴンはこちらをその真っ赤に染まった丸い目で睨みつける。怒りと共にどこか哀しそうにも見える目だった。
 ドラゴンは私の方に手をやって、ドンッという音を立てながら弾き飛ばす。私の身体は簡単に宙に舞い上がった。同時に剣も私の手から離れる。
 落ちると身構えた時、身体が不意に暖かくなって、身体は落ちるのをやめた。

「危ないで、カリン」

 アリシアが浮遊させてくれたようだ。助かった。「ありがと」と手短に礼を言い、落としてしまった剣を拾いに行く。
 剣を拾うと、剣のグリップが少し欠けているのに気付いた。さっきので欠けてしまったようだ。
 拾い上げた剣をもう一度持ち直し、再びドラゴンの方を向く。ドラゴンは少しだけ疲れてきたのか、私が来た時より息が荒くなっているように感じる。なぜだか胸がいたむ。

「こりゃキツイわ。カリン、なんかない?」
「え……。うーん」

 大声で叫ばないと聞こえないので、私が悩んでいるのはアリシアに聞こえなかったようだ。ドラゴンに視線を向けながら「カリンー?」と呼ぶ。私は「待って!」と言い一時距離を取る。
 あのドラゴンはシュウ君が言うようにきっと自分で動いている訳ではない。──でも、どうしたら良いかがわからない。
 考えても時間が無駄だと踏んだ私は剣を構えてまたドラゴンの方へ歩みを進める。
 ……さっきは弾かれてしまった。弾かれない、弾かれてない。あ、足! 足の関節だ。少しばかりは弾かれるだろうが、少なくとも骨にダメージを与えられるかもしれない。

「みんな! 足の関節を狙って。骨のダメージの蓄積でドラゴンを倒れさせるの!」

 次こそは、と自分に言い聞かせてまた赤紫の壁に向かった。