コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

2章 2話 №9 ( No.65 )
日時: 2015/02/22 10:56
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: zCJayB0i)
参照: 2話 無事終了!

 すこし時が過ぎると心は段々と落ち着いてきた。

「ごめんね。もう大丈夫」
「うん。じゃあ、見ないほうがいい」

 私が後ろを向くとカサカサと音が聞こえてくる。蘇生呪文だ。1分足らずで「もういいよ」と言われ振り向くと、そこには心が無いように見える目をする赤いドラゴンがいた。
 私はゆっくりドラゴンに近付いてそっと手で触れる。

「……あ、トクトクしてる」
「すごいやろ。心臓までしっかり蘇生できるのはなかなかいぃへんやで」
「そんなことないよ」

 フゥと息を吐き、ドラゴンの足に私の足を掛ける。よいしょと一斉に乗っかる。シュウ君とアリシアもすぐに乗り付ける。

「おつかまりくださいね」

 そういえば人間になっているシュウ君がドラゴンの頭を撫でると翼が大きく広がり、まわりが揺れ始める。急に地面から離れたかと思うと、もうガクタラ宮殿が見えるくらいまで上にきた。

「……ん? 誰?」

 体勢が安定してきた頃にシュウ君が首をかしげる。
 ──風が吹く。
 その風は一気に強くなり、さっきまで雲ひとつない空が暗くなり始めた。なにこれ?
 遠くに一瞬雷が見えたと思ったら、そこにぽつんと光が見える。隣を見ると、ポカンと口を開けるアリシアと、光に目が釘付けのシュウ君。

「あははっ。お見事だったねぇ」

 どこからともなく声が聞こえる。光に目を戻すと、段々とこちらに迫ってきているようだ。

「シュウ? 覚えていないかい?」

「シュウ君、なに?」

 シュウ君の方をもう一度向くと、口を押さえて静止している。

「やあやあ、別に怖がる事ないよ。君がカリンだね。よろしく頼むよ」

 さっきより声が大きくなったかと思えば、目の前に黒いシルクハットが見えた。

「せ、先生……」
「わかるじゃないか。君はやはりいい人材だ」
「な、なぜ先生が!? あいつのせいですか?」
「彼は偉大だ。私から近付いた」
「そんな……クソッ」

 私の目の前のシルクハットはふわふわと漂い、私の手に落ちた。それと同時に雲は消え、風も止んだ。

「カリン。そんなもの捨てろ」

 シュウ君が見たこともない怖い顔をしてこちらを見てくる。私は慌ててシルクハットを放り投げ「ほいっと」とひと言。

「シュウ。あの人、誰や?」
「先生だ。魔法学校の担任の……」



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