コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

2章 3話 №1 ( No.66 )
日時: 2015/02/22 10:59
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: zCJayB0i)
参照: ゆっくり書いたのが仕上がったので。三月になったらちゃんと更新します

*〜* 3話 *〜*

 彼が落ち着くまで、少し時間がかかった。大丈夫になったときには、もう街が見え始めていたのだ。
 見えた街は、ガクタラとは打って変わってビルや高い建物が所狭しと建ち並ぶ、東京のようだ。

「ナルハピピは帝国なんや。うちらの国じゃなくて、独立してるねん」
「でも、治めている人はいい人だよ」

 シュウ君の話によると、ガクタラの工業技術とは違い、魔法術や薬草術の〝非科学的〟な専門家が集まるという。
 王家の人間もここの優れた薬草術を使うそうだ。しかし、国民はこちらの王家が嫌いなようで、そういうことはトップシークレットだそう。

「そろそろ降下するから、しっかりつかまってね」

 私は「うん」と言い、ウロコにつかまる。冷たい……。


◇◆◇


 ドラゴンが地面に着いたのを確認して、3人はナルハピピの街へと降り立った。ここは、どこかのビルの屋上のようだ。カツカツと靴が音を立てる。

「目、つぶってて」
「いい。見てる。私のせいで……ね。ごめんね」

 シュウはまたドラゴンに手をかざす。すると、ドラゴンの体が段々と薄くなってゆく……。
 ドラゴンの体が完全になくなるまで、さほど時間はかからなかった。カリンは「さよなら」と言い、手を合わせる。

「セト……様」

 アリシアは心配だった。国王であるセトは、少し高齢という事もあって、体調が前から良くないと聞いた。
 セトはこの世界に数少ない翼(ウイング)を持っている者だ。由緒ある天使でさえも、翼を捨てた者の1人である。
 翼はなにかと厄介だ。
 昔に関しては、差別の対処でもあった。セトもまた、いじめられていたのだ。しかし、彼は今、国王として、皆に尊敬させる身。翼を守るための活動も行っている。そんな彼が、命の灯火を消そうとしているのだ。

「駄目です。国民に気付かれてしまいます」

 肩まである白髪混じりの立派な黄色い髪をなびかせながら、誰かがヒソヒソ声で話しかける。セトの付き添いでやって来た、大臣のチェゼルだ。蒼い目が透き通るようにこちらをみている。
 一方セトは荒く息を吐き、白と黄色の毛を逆立てる。とても苦しそうなのは見なくてもわかる。コンクリートの壁で挟まれたこの部屋は、空気が悪かった。

「チェゼル。私はもう無理だ。使いたくなかったが、アレを……」

 セトがそう言うと、チェゼルは凍えたようにぴたりと止まり、「いや、しかし」と思わず戸惑いをあらわにする。
 しかし、セトにはもう時間がなかった。仕方なく立ち上がると、チェゼルはフゥと息を吐いた。

「では、アレを使わせていただきます。本当にいいのですね?」

 セトはコクっと頷く。チェゼルは精神を集中させて、呪文を唱え始めた。