コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 2章 3話 №2 ( No.67 )
- 日時: 2015/02/26 21:26
- 名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: zCJayB0i)
チェゼルが呪文を唱え終わると、彼の手には深い緑色をした葉っぱが落ちてきた。重い見た目とは違い、かなりふっと乗る。
次にチェゼルはその葉を細かくちぎり始めた。びりっ、びいっという音が室内に悲しく響く。
「セト様。我慢をして下さいね……」
セトはまたコクっと頷くと、口、正確にはクチバシを開いた。チェゼルは粉になった深い緑の葉を、少しずつセトのクチバシへと流す。全てクチバシへと入れると、大きなクチバシを思いっきり閉じた。
「うっ! ふんぬっ。うぐぅ」
セトが思わずバタつく。覚悟はしていたが、この世の物とは思えない味だった。
チェゼルはクチバシを両腕で抱きしめるが、それでも開きそうになる。唾液が滝のように溢れ出て、腕はベトベトだ。それでも彼は耐えた。
毛の逆立ちも、彼のバタつきも、少しずつ治る。そして、ついに息だけとなった。
「セト様。あなたと出会えて良かった」
チェゼルが表示をひとつも変えずに静かに呟く。セトの息は、もう消えそうなくらい細くなっていた。
「必ず見つけ出しますよ──」
「セトッ!」
彼の決心の言葉を掻き消すように聞こえたのは、高い女性の……どこかで聞いた覚えのある声だった。
アリシア様だ。
「アリシア様。どうかセト様にキスをして下さい」
見つけ出す前に見つかった。きっとアリシアこそセトの1番大切な人と彼は思ったのだ。
「アリシア。なにがあったの?」
アリシアの隣にいるカリンだ。息が切れていて、少し苦しそうにしている。
「大臣。アレを使ったのですね」
アリシアの目は、全てわかっていた。彼女は寝ているセトの方に少しずつ歩いてくる。セトの前に来ると、立ち止まって、首を振った。
「うち、あ。私ではありません。息子さんじゃないと」
「ねぇ? アリシア?」
「ごめんな、カリン。でも、これをせんとあっちの世界に帰れへんねん」
「なんか、わかんないけどわかった。手伝うよ。ね、シュウ君?」
すると、シュウは「ん?」と一瞬間を置いて、「あ、もちろん」と了解した。
と、言っても何をすればいいのかはわからない3人。うーんと考えているアリシアを見て、チェゼルがハッと何かを思い出した。
「そうだ! とりあえずここの騎士団を当たってみてはいかがでしょうか。確か、息子様は剣術がピカイチと聞いた事があります」
ナルハピピの騎士団はいくつもあるが、世界的にも有名な〝ナルハピピ・トランニコラ・ウィール・トールセント・ザ・ナイツ〟通称トール騎士団。鬼の騎士団という異名を持つ団がある。
剣術をする者は、誰もが憧れる団だ。
「それや! シュウ、カリン、行くで」
そういうや否や、アリシアはルンルン歩き出す。しかし「あっ」と言いまた止まった。
「シュウとカリンで行ってきてくれへん? うち、ここにいたいから」
するとカリンは「でも、アリシアしか知らない事あるでしょ」とひと言。
しかし、その打開策はすぐにシュウが出した。
「鳥だ。鳥を使えばいい」
「それや!」というアリシアを尻目にわかっていないカリン。
鳥というのは、ただの鳥ではなくて、伝書鳩のように飛んできて、伝えたい事を喋ってくれるという画期的な生き物だ。しかし、使いこなせるのはある程度の魔術が使える者のみで、まだ一般的には普及していない。
そんな鳥を使おうとしているのだ。
「わ、わかったよ。でも、そんな魔術を使えるの、シュウ君?」
「え、まあ。そのくらいは軽く……」
「じゃあ外に出よう」と言うシュウの後ろをアリシアとカリンはついていった。
石の階段を急いで駆け下り、外に出る。鳥はどこにでもいる訳ではなく、主に森に生息するため、森にワープする必要があった。
「あ、あそこに行こう。えーっと」
「パール湖やろ。行くでぇ……ほい!」
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【筆者のひと言】
お久しぶりです。これで完全復活です!
そしてとりあえず今回は1500文字にしてみました。こんなもんでいいかな? しばらくは1600文字前後で書かせていただきますね。(慣れない文字数なので、少し更新が鈍る事が予想されます^_^;)
これからもよろしくお願いします♪
*Ruku*