コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

2章 3話 №5 ( No.73 )
日時: 2015/03/18 21:59
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: h5.UUysM)
参照: 短めです。ただ、会話文が多いです


 彼と過ごす時間はゆっくりと流れ、1秒1秒をチェゼルは大切にした。
 3人が出発してから実に4時間が経った頃、段々と外が騒がしくなってきた。チェゼルはなんだろうかと思うと、外から声が聞こえてきた。

「はやく逃げろ!」
「もうそこまで来てるぞ!」

 声はどんどんと大きくなる。はやく逃げた方がいいのは、チェゼル自身もわかっているが、セトがいる。セトを外に連れて行き、人目に晒すのはなんとか避けたい。
 少しずつ暑くなってきている感じかした。彼自身も、建物自体も。額からは、汗が滲む。もう時間がない。そう感じたチェゼルは、悩んだ末に行動に出た。


◇◆◇


 ワープした先は、見覚えのないところだ。しかし、やはり森だった。
 私はついた膝を起こし、立ち上がる。……あ、あれ? 目の前に立っているのはシュウ君ではない。全身を覆う黒いローブに、少しだけ見える真っ赤な髪。身長はシュウ君と同じくらい高い。ゆっくりと、一歩ずつ近寄ってくるローブの人に、恐怖を覚えた。
 私が一歩後ろに下がると、ローブの人が一歩前に出る。こんな時にシュウ君がいたら……なぜシュウ君はいないの?
 ついに私は後ろの木に足がついて、そこにもたれる体勢になった。ああ、もう。こうなったら。

「あ、あなたは……誰ですか……」

「──知っているだろう?」

 聞き覚えのある声だった。ちょっと紳士的で、こっちをあざ笑うかのようなこの声。
 あの人だ。私の脳裏には、すぐに場面がよぎった。嵐と共にやってきて、私にシルクハットを渡した、確かシュウ君の魔法学校の先生だと言っていた。

「──わかったね」と、彼。

「シュウ君はどこですか」と、私。

「君に話がある」と、また彼。

「私の質問に答えて下さい」と、また私。

「あれは結構前だったなあ。魔法学校の創立650周年くらいだったと思うよ」ついに、彼は話し出した。

 全く話が噛み合っていないし、私の質問は無視された。しかし、彼は続ける。
 結局のところ、シュウ君の話だった。突然現れて校長を殺害という、かなり残酷な内容だった。

「彼には力がありすぎるのだ。私達の指導でなんとか死に対する言動、心情は抑えることが出来た。しかし、それも限度がある。彼はそのうちに暴走し、世界を破滅させるほどの力を発揮するだろう」

「すみません。さっきから言ってますけど、シュウ君はどこですか」

 私が強めに言うと、彼はシュッと話を止めた。そして、

「人の話を聞け! もう知らぬ。それ程にシュウが恋しいか? それ程にシュウといたいのか? ならば、彼が容赦をしないぞ」

 彼はそう言い残して、短く何かを唱えた。私の記憶はそこで途切れる。