コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

2章 3話 №6 ( No.74 )
日時: 2015/03/20 21:02
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: h5.UUysM)

 一筋の光が見えると、それはどんどんと広がり、視界が開けた。目の前にいるのは……シュウ君だ。
 私は目がよく見えないまま立ち上がろうと頭を持ち上げると、おでこにゴツッと衝撃が走った。

「あいっ……た」
「カリン、大丈夫?」

 目を開けると、やっと見えたシュウ君。おでこがちょっと赤くなっていた。私が「おでこ、赤いよ」と笑いながら言うと、シュウ君も「カリンさんもね……はは」と鼻で笑った。ちょっとひどい。
 そんなことより、ここはどこだろう。見た所、さっきのあの人がいたところと同じようだ。

「カリン、起きたぁ? 成功やで」

 茂みの方からアリシアがこちらに歩いてきた。手には古ぼけた木の枝が1本。

「どや? シュウ。こんなええ木があったで」
「海で生える神木の枝か。杖に使うのはもったいないね。うーん。剣の持ち手とか」

「カリン、今度これでなんかつくってやろか?」とアリシアに言われたが、シュウ君の方が使いこなせると思うから、と答えた。
 そうそう。とアリシアは話を戻して、鳥までもうちょいやでと笑顔を見せた。

 しかし、歩いてみるとアリシアの〝もうちょい〟は信用できなかった。もう歩き始めて20分は経つ。アリシアにまだ? と聞いても、〝もうちょい〟の一点張り。シュウ君に聞いても「アリシアのことだから、あと30分は歩くよ」とサラッと言い流されてしまった。

「……そういえばさ、カリン。先生に会ったよね?」

 一瞬背筋が──いや、全身が凍りついた。今、私はきっと凄く間抜けな顔をしているだろう。

「わかったの……?」
「うん。なんとなくだけど。何か言われた? どうせ僕が危険とか何とか……」
「──シュウ君は危険なんかじゃないよ」私はそう呟いた。そして私は、シュウ君と話が噛み合う事を、そんな当たり前な事を幸せに思った。
 その時だった。

「いたぁぁぁ! 鳥いたで! ……あ、静かにな」

 アリシアの指がさす方を見ると、木の枝に止まる蒼白い羽色の鳥がいた。
 大きさは30センチ程だろうか。飾りはしないが、尻尾から伸びた2束の蒼い毛と吊り上がった目。そこには美しさがあった。

「カリン、武器を出して。きっとこいつは強敵だな」

 すぐにシュウ君の目が変わったのがわかった。シュウ君は、クルッとバック転をするとするっとした体型のネコとなった。

「燃てきたでぇ。うちは後方、カリンは前方な」
「ちょっ。待って、鳥を傷つけるの? それは嫌だよ」

 こんなにと美しい鳥が痛む姿を見たくはなかった。しかし、私の心配はシュウ君の言葉ですぐに消えた。

「カリン、鳥はそんなちょろくないよ。僕たちの攻撃くらいで傷つかない」

 鳥は神様くらいの力があるらしい。攻撃というよりは追い込んで捕獲するために戦うと、シュウ君は教えてくれた。
 そして、戦うために必要なのは武器だ。もう1度、出せるかな。しかし、とやかく言っている時間はない。とにかく精神を集中させる。出ろー武器出ろー……。地面をしっかりと見つめると、今回は地面から少し離れた空中で例の光が発生した。

『おい、またかよ。まあいいさ』

 あ。また何か聞こえた気がした。なんなんだろう、この声みたいなの。光が止むと、剣がぽとりと落ちた。この前出てきたより、持つところがしっかり、綺麗になっている。気のせいかな。

「ええね。カリン、相手は空飛ぶからな、気いつけなはれや。とりあえずゆっくり近づくんやで……ゆっくり」

 そういえば盾があったらいいのに、と思いつつ蒼い鳥に気付かれないようゆっくり近づく。

 ……カラン。

 しまった。足元に落ちていた小さな石を蹴ってしまった。その音にあちらは、気づいていないのか。こちらを見ていない。
 よし、と思いもう1本足を運んだ瞬間、蒼い鳥が物凄い勢いで飛び去っていった。

「カリーン! ウチゆっくりって、言ったやろぉ」アリシアの怒る声が耳に入る。

「ごめんなさあい」
「とにかく追いかけろ! 見失うぞ」

 シュウ君の走るスピードは速くて、3メートルくらい差があったのに、もう追いついてきた。私も必死に走るが、シュウ君の方が2倍くらい速い。逆に差が開いてしまった。

「シュウ。見つかったらすぐに麻痺させるんやで、わかっとるな」
「でも、鳥だぞ。5秒くらいで解けるよ」
「それまでには追いつくわ」
「シュウ君、お願いー!」

 全員が全員必死に走っていた。そして、私とアリシアがついた時には、シュウ君が既に蒼い鳥との攻防を見せていた。
 シュウ君がスッと尻尾を振ると炎が蒼い鳥を襲う。しかし、蒼い鳥はその炎を翼で起こした風でシュウ君の方へと追い返す。鳥ではあるものの、その強さは折り紙付きだった。