コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

2章 3話 №7 ( No.75 )
日時: 2015/03/22 20:46
名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: h5.UUysM)
参照: 夏までに書き終わらないと思う…

 アリシアと私も応戦するが、敵は空の上。なかなか私の剣は届かなかった。どんなに高く振りかざしても、まだだ。まだだ──。
 アリシアは相変わらず、しっかりシュウ君と私の援護をしてくれている。お陰でまだ疲れていない。

「あ! カリン、その剣見してみい」

 アリシアが不意に言った。私が警戒しながらアリシアに近づき、剣を見せる。すると、アリシアの目がキラッと光った。

「やっぱりやな。これ、もう使えるで」

 何を言ったのか……。何が使えるのか……?
 アリシアの言葉をシュウ君が聞き付けたらしく、シュウ君がこちらを向いた。

「もう? さすがカリンだな。よし、今から言うことに従って」

 まず、足をしっかり着いて、深呼吸。タイタスと叫んで剣を振る。シュウ君が言ったのはそれだけだった。
 足を踏ん張って、目を閉じ深呼吸……。ふう。シュウ君と蒼い鳥の必死のやり取りが聞こえる。──はっ! と、思った時には私の身体は10メートルほど後ろに吹っ飛んでいた。
 驚いて目を開けると、目の前には蒼い鳥。疾風のような攻撃をまともに受けてしまったようだ。このままだと木にぶつかってしまう。踏ん張ろうとするが、地面に足が着かない。ぐっと力を入れると、少し身体が軽くなった。

「あっかんわぁ」

 アリシアが間一髪のところで浮遊術をかけてくれたようだ。危うく死ぬところだった。

「少しでも長く距離をとって、もう一度!」
「うん!」

 全ては一瞬のことで終わった。足を着き深呼吸をして……。

「タイタス!」

 大きく剣を振りかざすと、シュンッという音と共に、蒼い鳥の鳴く、というより叫ぶ声が聞こえた。
 鳥が落ちている。私の剣から出た何かは、確実に蒼い鳥に届いていた。

「アリシア、はやく!」
「おう」

 アリシアが蒼い鳥の落ちるところを予想し、着地地点へと急ぐ。着地地点へと着くと、アリシアの心の武器である杖を上に向けた。
 アリシアが何も言わずとも、杖は彼女の命令に従った。一瞬電気を発したと思えば、電気がばっと放射線状、つまり網のように開く。そのなかに蒼い鳥がちょうど入った。
 すると、電気の網はキュッと底を結び、初めて地面へと着地。鳥は痺れているように見えた。

「どや? アリシア特製の電気網。こんなん、うちしか使えへんで」
「おっと、暴れるよ。気を付けて」

 痺れているはずの鳥だが、網の中でバタバタと暴れていた。しかし、1分も経たないうちに動かなくなった。気絶してしまったようだ。

「よし、王様のところに戻ろうか」


◇◆◇


 アリシアのワープで、街に戻ったとき、こそは火の海だった。木は焼け落ち、赤いレンガの建物でも崩壊していた。あちこちで泣き叫ぶ声が聞こえ、頬には熱風が伝う。

「火事だ。珍しいな」
「お、王様は? どこかな」

 私が心配していたのは、寝ていた王様、セトであった。鳥を持ったアリシアはその場に立ちすくむ。その目は生きていなかった。
 迷う私たちの元に、1人の男が近寄ってくる。こんな大火事だというのに、青い上下の半袖とズボン。少し筋肉質な身体と似合わないサラッとした金の髪の毛に、ブルーの目をしている。そして、手には長い鉄の棒を持っている。

「やあ。お嬢さん達。ここは危ないよ? 君は、魔法使いかな? 随分と魔力があるんだね」

 彼の声は少し太くて、綺麗だった。

「あなたは火消しですね。ここは随分と昔のやり方をとるものだ」

 シュウ君が吐き捨てるように言った。日本にも、江戸時代なんかにいたと聞いた。火消し。要するに、持っている棒で周りの建物をどんどん壊している人達だ。

「お嬢さん、はやくお逃げなさい。俺は何もしないからさ」

 彼はそう言って立ち去ってしまった。シュウ君は少しカリカリしているようだ。ああいう人達が苦手そうなのはすぐわかる。

「……はやく王様を探しに行こう」