コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 2章 3話 №9 ( No.81 )
- 日時: 2015/04/02 20:15
- 名前: 占部 流句 ◆PCElJfhlwQ (ID: h5.UUysM)
- 参照: 最近書いていて言葉が出てこない。これはスランプか?
「おまえらっ。見てへんと思ったんか。あっほやなあ」
本人は元気に言葉を発しているようだったが、まだまだ言葉に元気はなかった。
と、その時──
「ただいまー」
と、まるで自分の家に帰ってきたかのようにシュウ君がドアから登場した。
「お、お帰り」
「シュウ君お帰りなさい。アリシア、だいぶ良くなったよ」
シュウ君は良かったと一息つき、こちらに来て座る。そして、口笛を吹くと、開いたままのドアから鳥が飛んで来た。
「わあ。すごいね」
「いやあ、ありがとう」
「ってか2人とも疲れたやろ。そろそろ寝よか」
「明日、朝一で出発だからね。あと……まあいっか」
最後に言おうとした事がとても気になったが、それよりも疲れが勝っていた。もう私の限界は既に超えていたみたいだ。すぐに記憶は途切れた。
◇◆◇
結局、3日間もの時を使っても王は見つからず、アリシアは王宮へ。私とシュウ君は王であるセトとチェゼル、更には王の息子を一気に探す旅に出ることになった。
短いようで長い3日間で、シュウ君は完全に鳥を手懐け、アリシアと私もなんとか接し方を覚えた。ちなみに、昨日の晩。みんなで話し合った末に、鳥の名前を決定した。
「ほい、じゃあな。シュウとカリンはイチャイチャしたらあかんで。ピピに見ててもろーてるからな」
鳥の名前は、私が案を出したピピになった。ピピは初め、こちら側に付いてきて、何日か経ったらアリシアの元へ近況報告という形だ。
「それじゃあね。さて、行くよ。カリン」
「はあい。じゃあピピ待っててね!」
「おう」とアリシアは言い、ワープで消えていった。
さてと。私たちは何も手がかりなしで、どこに行けばいいのだろうか。
「とりあえずだけど、情報収集にローナーまで行こう。隣の国だよ」
ローナーは海に面した港国で、漁や海賊なんかで生計を立てる人が多いところだという。さらに、国の中央部には人が多く集まる集会場みたいな所があり、情報収集もできるかもしれないとの事だった。
「あ、歩いて行くの?」
と、私が恐る恐る聞いてみると、シュウ君はあははと笑って、
「まさか。何かに乗ってこう」
と、言った。
もしもギャイに乗るのなら嫌だけど、ドラゴンに乗るのなら大歓迎。ドラゴンに乗った時の爽快感はたまらなかった。
「あ、車にしようか」
「え? 車って?」
「狼に引いてもらうんだよ。ここからだと、グリート1番街の貸家がいいかな」
グリート1番街はナルハピピの南側。今いる森のロッジから5キロほど南に行けばいいらしい。
シュウ君が、腕に乗ったピピに南に行くように手で指示すると、ピピがチュンと鳴いて蒼い羽をパタパタと動かした。そのままピピは少し上昇して、どんどんとまっすぐ飛んで行った。
「あれ、はやいなぁ」
「ちょっと。走るのは……」
しかし、ピピは待ってくれない。見失いそうになる度に、シュウ君が人差し指と親指を着けて輪の形にし、それを口に当ててピーと吹いた。シュウ君がそうすれば止まるものの、私たちが追い付くとピピはまた進んで行ってしまった。
「まだまだだったね」
体力には自信のある私たち2人だが、15分もしない内に息が切れてしまった。
ちょっと休憩ということで、ピピを止めて草に腰掛ける。まだ森は抜けられそうもない。
「ふう。もう半分くらい進んだよね?」と、私。
「もしかして、遠回りしてるかな。はぁ、はぁ……」と、シュウ君。きっと。いや、絶対にそうだと思う。もしかしたら、今日中に到着しないのではないかと思い始めたくらいだ。上から少しずつ降り注ぐ日光が、さっきよりオレンジ色になっている気がする。
「行けるところまで行こう。ふう」
「そ、そうだねえ」
私たち2人はまた立ち上がり、ピピを追いかけ始めた。