コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: Sweet×Sweet ( No.25 )
日時: 2015/06/18 16:55
名前: 左右りと (ID: XaDmnmb4)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs/index.php?mode

【キイチゴ 3/4】いつもよりひかえめ


「ねぇ、好きなんだけど」


「…………」

「カイチョー? ねぇ聞いてる?」

「……それでは、来週行われるボランティア清掃についてですが」

「好きです、付き合ってください」

「参加希望者が多数のためグループ編成を……」

「アイ! ラブ! カイチョー!!」

「……だぁあもうっ! うるっさいですよ! 風見頼人ッ」


 顔を真っ赤にした紗瑛は、そう怒鳴る。思わず頬が綻んだ。



*


 次の日の朝、自らの教室に入ると紗瑛は窓際の席で、何かを書いていた。朝からラッキー、と思うと同時に昨日のことが思い出される。


『好きです、付き合ってください』


 俺が通う高校の一階に位置する、生徒会室。夏も間近に迫った6月。冷房をつけていないのか、半分くらい窓が開いていた。そういえば、紗瑛は生徒会の会長だったなぁ、と思い出す。そして胃の下あたりに沸々と湧き上がる好奇心と、悪戯心に駆られるように、窓に手をかけていた。窓から上半身だけを覗かせて、中の様子を窺う。

「これから定例会を始めます、よろしくお願いします」

窓のすぐそばに紗瑛は座っていた。多分俺の前では見せない、几帳面で生真面目な紗瑛。なんだか俺の知らない紗瑛がいるようで、ムッとした。そのせいだろうか、あんな言葉を言ってしまったのは。


そんなわけで。いくらナンパの経験が多い俺と言えど、告白なんて今まで一度もしたことがない。それをあんな形で、告ってしまうなんて。あああ、なんであんなこと……!

「おはようございます、風見頼人。朝から学校に来るなんて珍しいですね。あなたは、ここ一帯を更地にするつもりですか?」

「……んぇ?」

 俺が悶々と、どうしようもない後悔に苛まれていた間に、俺の存在に気づいたのだろう。紗瑛がこちらを見ずにいつもの口調でそういった。あ、意外とさっぱり、なんて思うと同時に胸の奥にちょっぴりの残念感。
——なんでこっちがこんなに悩んでるのに、紗瑛はけろっとしてるんだ? ……というか、さら地って?

「遅刻に早退、サボリは当然。そんなあなたが朝から、それもこんな早くから、学校に来るなんて……しかも、カバンまで持って。巨大竜巻でも来ない限り、今日あなたが学校に来る理由が見つかりません。竜巻を発生させてここら辺一帯を更地にしようとしているのでしょう? それだけではありません。いつもの貴方らしくもないため息と、焦燥感溢れる表情。……巨大地震でも起こすつもりですか?」

 俺にそんな能力ねぇよ、と突っ込む。だが紗瑛はなおも視線を俺の方に向けない。いつも通りといえば、いつもどおりなのだが。それにしても、告白したのにこんなにドライだと、いくら俺でもツライというか……なんというか。

「……きの………………いえ、なんでもありません。ちなみに今日は数学のテストですよ、予習でもしておけば、最悪の事態は免れられるのでは?」

 何か言いかけた紗瑛に違和感を覚える。物事をはきはきと、しかも歯にもの着せぬ物言いが売りの紗瑛なのに、今は何か遠慮しているように感じた。