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Re: 【感謝!!】Sweet×Sweet 【参照500突破!】 ( No.30 )
日時: 2015/06/28 17:36
名前: 左右りと (ID: XaDmnmb4)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi


【キイチゴ】

「どうしてこんなことに……」

 さっきから何度目かも忘れるほどにつぶやいた言葉を、もう一度つぶやく。

 思い当たることと言えば、やはり告白したことだろうか。生徒会長の務めを果たそうとしていた紗瑛が、遠く感じて、一人で勝手に嫉妬した。目に見えない距離を詰めたくて、告白した。でも、それでどうなった……? 昨日よりも遠くなったじゃないか。

 目の奥が、熱くなる。視界がゆるやかに霞んでいく。俺は歯を食いしばって、どうにかこらえる。

 紗瑛と一日話したりできないだけで、こんなにつらいなんて、知りもしなかった。近づいたらそれが当たり前で、離れることを考えていなくて、その分つらい。

——ねぇ、紗瑛。俺は……どうしたらよかったんだ?

「紗瑛…………」

「なんですか?」

 ダメだ、幻聴まで聞こえるようになったみたいだ。紗瑛はもう帰ってしまっただろうか。そう言えば今は何時だろう。校庭ではサッカー部員がボールを追いかけて走り回っている。さっきゴールを出したばかりだったのに、今は練習試合をしているようだ。随分ここにいてしまった、そろそろ帰ろうかな。

「あなたはわたしが白骨化遺体になるまで、待たせるつもりですか? 人の名前を呼んでおいてサッカー部員にそんな熱の籠った視線を向けて、もしかしてソッチ系の人なんですか?」

 俺は自分の耳と、目を疑った。聞き慣れた——だけど誰よりも恋しい声が、俺の耳に届いて、ハッと振り返る。そこには、しゃがんでちょっぴり不機嫌そうな顔の紗瑛が、いる。俺の事を、見ている。


 なんども合わせようとした目が、こちらを見ている。


「紗瑛……」

「なんですか?」

 さっきのは、幻聴なんかじゃなかった。紗瑛はそこにいて、俺の呼びかけに答えてくれていた。

「……紗瑛っ」


 俺は堪らず、紗瑛に抱きついた。
いつもは手を伸ばしてやっと触れるような距離の紗瑛の髪が、俺の横顔に触れていて、たぶんシャンプーの甘い匂いがする。それは見た目どおり、柔らかくて、くすぐったい。抱き寄せた肩は、頼りになる紗瑛とは思えないほど、頼りなくて華奢だった。

「……紗瑛! 紗瑛っ!!」

 まるで母親にだきつく子供の様に、紗瑛にすがりついて、名前を呼ぶ。何度も思い、考えて、呼ぼうとした名前を。もう、離さないと、言うように。


「か、風見……頼人!! くるしい……です、よっ」

 俺の腕の中で、苦しそうに紗瑛がうめいた。俺はハッとして腕に込めた力を抜く。でも、まだその肩は離さない。まだ、離せない。

「なんですか……突然。そんなにわたしのことが恋しかったんですか?」

 背中に腕を回されたまま、顔だけ少し話した紗瑛が、そう笑いを含んだ声で言う。はっきり言うなぁ、と内心苦笑しつつ、俺もはっきり言ってやる。

「うん。すっごい、寂しかった」

 いつもは、絶対こんなこと言わない。恋しかったのはかいちょーだろ、って言い返してやる。でも、もうそんなふうに強がっていられないほどに、紗瑛が恋しかった。寂しかった。

 紗瑛は俺の言葉を笑うだろう、と思っていたのに、やって来たのは沈黙。紗瑛をみるとうつむいてしまっていた。どうしたんだろうか。

「紗瑛?」

「もう“ひかえめ”なんてやめます」

 ぼそり、つぶやいた紗瑛の言葉を理解する前に、紗瑛の顔がすぐ近くに。そして、それはすぐ離れた。多分、水に投げ込んだ石が水面と接触する時間と同じくらい、短い時間。

「私も好きです」

 顔をちょっぴり赤くして、紗瑛はそう笑った。ふにゃっと恥ずかしそうに笑う紗瑛を、俺は初めて見た。今までの紗瑛の表情の中で一番可愛いと思う。

 突然、短時間の間に起こったことについていけていないはずの、俺の脳みそはそんなことを考えていた。機能しているのかしていないのか、わからないけど、そんなことどうでも良かった。

 俺はいつものように、ちょっとだけ強がる。

「うん、知ってる」

 いつもより、近い距離で。ちょっとひかえめに。
 

——————————————————————————————————————————End.


【キイチゴ いつもよりひかえめ】

こんにちは、やっと書き終わった感にひたるりとです。
このお話はわたしが数学の授業中に、紗瑛と頼人の続きはどう書き出そうか、と考えた時にできました。

『ねぇ、好きなんだけど』

と、数学のノートに今も、残っております。だれかに見られたら大惨事。


ではでは after×story をどうぞ。(解説がわりです)
  台詞のみ・小説のルール違反
ですが、ご容赦ください

*

「ねー紗瑛、あの時どうして俺の事避けていたの?」

「あなたが嫌いだからです」

「え……(涙)」

「嘘ですよ。ただ……」

「ただ……?」

「……どう接したらいいのか……わからなくて」

「……っ!!」

——どうしよう。どうしようもなく抱きしめたい!!

「紗瑛っ!!」
                                    
「あ、そうだ。これ今日サボっていた分の課題です。先生が怒ってましたから“いつもより”多めですよ?」

「そんなところで“いつもより”なんて要らないよ!!」

「そうですか」

「なんか、すっごい扱いが雑なんだけど?」


*

はい、とっても可哀そうな頼人君でした(*^_^*)


やっとのことで付き合えた、お2人です——(^^♪よかったですね
続きをまたかけたらいいと思いますが、今は書きたいものがあるので、先になってしまうかなぁ……(>_<)

そしてもっと、紗瑛ちゃんの罵詈雑言のマシンガンを暴発したかったです。