コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【感謝!!】Sweet×Sweet 【参照600突破!】 ( No.35 )
- 日時: 2015/08/07 15:28
- 名前: 左右りと (ID: XaDmnmb4)
- 参照: http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode
【12/29 ホオズキ】支えてあげたい
「杏花ぁ? ちゃんとレポートやって来てくれたぁ?」
厭味ったらしい声が、ざわめく教室の隅っこから発せられた。一瞬ざわめきが止むが、いつものことだ、とまた騒ぎ出す。どうしてそんな無関心でいられる? クラスメイトなのに。俺はとげとげと、イラつく感情のままに机をバンっと叩いた。
「よーし、席につけ。出席とるぞ——!」
俺が立ち上がると共に教師が入ってくる。言葉を聞き終わるよりも先に教室から出た。ホームルームが始まって生徒の消えた廊下は静かで、俺の足音が良く響く。わざと音を立てるように歩いた。それが、意味がないことを知っていて——。
*
藤本杏花。それが彼女の名前。知ったのは俺がやっとのことで入学できた高校の入学式の日。クラス表が貼られた掲示板に、我先にと見たがる奴らが群がっていた。
でも俺はそれを恐れるほど臆病でも、弱虫でもない。
「おい、どけよ」
どす黒い、低い声でそういうと、振り返った全員が俺の姿を見て、道を開けた。俺は悠々と掲示板の前へ。でも俺が通るとできた道はすぐに人でふさがってしまった。くそ、出れねぇじゃねぇか。
「ふん、2組か……」
四十川……四十川……、と苗字をたどる。名前順で並んでいるならば、常に最初の方に来る上に、あから始まるのに、最初に四がつく苗字なんて、すぐ見つかる。
そんなわけですぐに名前を見つけた俺は、教室へ向かうべく、後ろを向く。
「うげぇ……」
さっきよりも増えた人は、前へ前へと行こうとして全く身動きがとれない。はぁ、もう一度言うしかないか。
再び道を開けさせるために息を吸い込もうとした俺の耳に、誰かの声が聞こえた。ざわざわと騒がしいこの群れのなかで、その声は一直線に俺の耳にやってきた。
「あのっ! そこ退いてもらえますか?」
俺の目の前にいるんだから、騒がしい中でも聞こえるのは、当たり前なのかもしれない。
俺の事を遠慮がちに見上げた彼女は、人の波にもまれながら必死に流されないようにしていた。
言ってしまえば、俺には関係ないし、そのまま放置してもよかった。だが、なぜだろう。俺はそうしなかった。彼女の人と人の間から覗いた手を掴み、引っ張り
「おい、そこどけ。見えないだろ」
さっき出しかけた低い声を出した。驚いて端へと避けたやつらがいたところに、彼女を放る。よろけながらも彼女は、掲示板を見上げた。
「藤本、藤本……杏花! あった、2組だ!」
俺はその場を今回こそ脱するべく、口を開いた。若干口角が上がってしまっていたかもしれない。
——そうか、同じクラスか……。そうか…………。
*
あれからもう数か月。教室内にはいくつものグループが編成され、それぞれ思い思いに過ごしている。俺は1人で机に突っ伏している。誰かと群れる気は毛頭ない。
「杏花ぁ、今日の掃除当番、代わりにやっといてね」
耳障りな声、顔をあげるまでもなく、あの卑しい顔をした女が、藤本に声をかけているところが見える。伏せていた顔をあげると、やはり。
「うん、いいよ」
屈託のない笑み。どうして仕事を押し付けられているのに、そんな顔ができるのか。
腹のそこから沸々と、何かが湧き上がる。これは、喧嘩を売られた時によくある、苛立ち。
最低なあの女にも、無邪気にそれを承諾する藤本にも、そしてそれを止める言葉を持たない俺にも、苛立つ。どうして、どうして。
でも結局、俺は女を睨みつけるだけで、何も言えなかった。
*
帰りの挨拶をすませると、三々五々に散っていくクラスメイト。藤本は今日も先生に呼び出される。雑用のために。
「藤本〜このプリントと、ノート職員室まで運んでおいてくれ」
あんのクソじじいが。藤本をパシってんじゃねぇよ、と内心胸倉をつかんでやりたくなるが、どうも言葉にできない。国語のテストの点数は悪くないのに。なぜだろう。
「はい、わかりました」
*
「……おい」
俺は思わず声をかけた。かけてしまった。
だって、考えてみろよ。そんなに背も高くないし、体つきもどちらかと言えば小さい方の女が、ふらふらと見るからに重そうなものを持って歩いているんだぞ? 気になるだろ。
「……えっと、何か?」
崩れそうなほどに積まれたプリントとノートを崩さないように注意して、藤本は振り返った。不思議そうに振り返った藤本の目は、綺麗な色をしている。入学式以来、初めて俺へと向けられた藤本の視線に、若干たじろぐ。
「いや、その……。重そうだから、手伝う」
まともに視線すら合わせられず、そっぽを向きながら少しぶっきらぼうに言う。もっと上手な言い方ができないのか、と自己嫌悪する。
「ありがとうございます。でも、大丈夫です。見た目より重くないですから」
そんな考えも吹き飛ぶほどの笑顔で、藤本は笑った。敬語なところが気になるが、それでも初めて俺に向けられた笑顔に、心が躍った。俺は途端に上機嫌になり、藤本を手伝うべくプリントとノートの山へ手を伸ばす……って、え?
「だ、大丈夫じゃないだろ。さっきからふらふら歩いてたじゃねぇか!」
「えっ見てたんですか?」
「うぐっ……」
手伝おうとすることに必死になりすぎて、墓穴を掘った。あぁ……俺の馬鹿。
「……やっぱり、お願いしてもいいですか?」
「…………え」
「三分の一くらいでも持ってもらえると、助かるんですが……もう、遅いですか?」
遠慮がちに、俺の事を見上げる藤本の目。不安そうな表情にドキリ、と胸が痛む。
「三分の一じゃなくて、三分の二なら、引き受ける」
慌ててそう言って、藤本の手から束を取り上げる。うん、やっぱり少し重い。こんなものを藤本に持たせるなんてあのクソじじいあとで、シメてやる。心の中で自己完結して歩き出す。だが、隣を並んで歩いていると思っていた藤本の姿はない。
「どうした?」
数歩分後ろにいた藤本はなぜかうつむいて、手元を見たまま動かない。体調でも悪くなったのか、それとも急用でも思い出したのか、とにかく藤本にいったい何が!!
「ふじわ———」
「ありがとうっ!!」
名前を——初めて——呼ぼうとした俺の言葉を遮って藤本は叫んだ。大きな声で。声を荒げた藤本を見るのは初めてで、俺は目を見開く。そして、
「ありがとう……四十川君」
初めて藤本が俺の名前を呼んで、今までで一番の笑顔で笑ってくれた。
「どういたしまして」
*
キミを———
笑わせたい
喜ばせたい
照れさせたい
驚かせたい。
もっと、もっと、もっと———。
キミのそばで、キミのことを、支えたい。
———————————————————————————————————————End.
【ホオズキ 支えてあげたい】
いかがでしたでしょうか?
休業(?)する、と言ってから何日たったか忘れましたが、ちょっとだけ書いてみました
執筆に意欲的というか“とにかく書きたい”という一心で書いていたころとは、比べ物にならないほど、技術的にはとても上達したと思います
ですが、とっても劣化しました
書きたい、書きたい、と思っていたころに比べて、内容がつまらなくなりました……
書きたいは書きたいんですが、疲れているんですかね、上手に文が書けないんです
無理して書いた文って、全然面白くないですよねー(*_*)
無視してくださって構いません、完全に趣味というか、練習としてちょこちょこ書きますので
そんなわたしのことを応援してくださる方がいるのなら、ちょっとだけで良いので、応援コメントをください
頑張ります