コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: Sweet×Sweet ( No.38 )
日時: 2015/08/01 17:52
名前: 左右りと (ID: XaDmnmb4)
参照: http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode



【11/24 ヤブデマリ】もうちょっと待って


「あれ、香織? まだ帰ってなかったのか」

 教室で、とある人が戻ってくるのを待っていると、その声が教室に響いた。あんたを待ってたの、と言いたくなる衝動をぐっとこらえる。

こうに言いたいことがあって」

「え、なに? 俺怒られんの?」

 なんでそうなるかなぁ。
 さっきまで読んでいた本をカバンにしまって、立ち上がる。さて、どう言おうかな。

「まぁ、とりあえず。帰ろう」

「お、おう……」


*


「なぁ……香織? 俺に言いたいことって結局なんなんだ?」

 駅のホーム。都会……とは言えない私たちの住むところは、この時間帯だと駅はほとんど人がいない。小さな駅に申し訳程度に置かれたベンチに、私は座っている。

 ほい、と差し出されたココアの缶を受け取って、答える。

「ありがと。でもまだ教えてあげない」

 駅と、この辺だと数軒しかないコンビニにしかない、自動販売機。大抵品切れ。でも今日は飲み物を補充する日。わたしの大好きなココアがお手軽に飲める。素晴らしき自動販売機。

「なんだよ—。気になるじゃんか」

 不満げにわたしの横に座る恒。その手には真っ赤な缶が握られている。そう言えば、炭酸が好きだったね。最近はそんなことも忘れていたことに気づくのと同時に、焦燥感が胸を刺した。

 そんな気持ちを紛らわすように、ゆっくりと近づいてきた電車に気づいた風を装って立ち上がる。

「電車来た」



 わたしたち二人しかいない電車はゆったりした速度で進んでいる。がたん、ごとん。心地よい揺れに身を任せていると、わたしの目的を忘れそうになる。いけない、いけない。

「ねぇ、恒? 小5の時のこと、覚えてる?」

「小5ん時? …………なんかあったっけか?」

「恒が、わたしのこと好きっていう噂が流れたこと」

「ん……あぁ。そんなこともあったなぁ。あれ弁明するの大変だったよ」

「ははっ……でもさ、途中であきらめてたよね恒は。もうどうでもいい、って」

「だって誰も信じてくれないんだもん、面倒だし……べつに香織のことは好きだし」

「そりゃどーも」

 手の中のココアが、熱を帯びる。掌の上で転がして、熱を逃がす。熱いのは苦手だ。

「なんだよ、それ。人が告ってんのに……」

「じゃあ、わたしも告ろうかなぁ……」

「おう、どんと告ってくれたまえ!!」

  



「……わたし、恒が好き。小4の時から」