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Re: Sweet×Sweet ( No.50 )
日時: 2016/01/02 00:13
名前: 左右りと (ID: dB4i1UE/)


【If Story/嘘】


 夕暮れが、街を橙に照らす。
 2つの影が人1人分空いて並んでいる。

 
「噂で聞いたんだけどさ…………」

「うん」

 上ずった声に顔を上げると少し照れたような、困ったような顔をした想い人だった人がこちらを見ていた。

「お前が…………まだ俺のこと、好き……だって……」


「……っ!!」

 何をいいだすかと、思えば。そんなこと! 
 自分の中では、とっくに終わらせた話なのに。こんなところで持ち出されてしまうなんて。その噂の元を探し出して、終わった話だから! と襟首を掴んで揺さぶってやりたい。


「俺のこと……今、どう思ってるんだ?」


 彼には、新しい恋人がいる。
 優しくて要領がいいけど、感情表現が苦手な可愛らしい人。わたしなんかじゃ勝てっこない相手。

「そんなの……」

 だから思いっきり泣いて、線を引いて、吹っ切ったのに。
 なのに……。

 顔を上げて彼の目を、見た——





「……嫌いだったよ、ずっと前から」
 


「……え?」



「前から、ね」











「……なぁ、知ってるか? 嘘つくとき、女の人って相手をじっと見つめるらしい」
「それ、嘘ついてるんだろ?」




 
 彼は、優しい。
 わたしが原因で、別々の道を行くことになったのに、今も友人として仲良くしてくれる。
 でもだからって、甘えてはいけない。うぬぼれては——いけないんだ。






「ははっ……ばれちゃった?」

 乾いた笑い声。今度は、視線をちゃんと逸らして——











「本当はね、過去形なんかじゃなくて、今も……嫌いよ」







From 始まりの鐘

もし、別れてからも連絡を取り合っていたら……