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Re: Sweet×Sweet【短編集】 ( No.53 )
日時: 2016/01/16 15:58
名前: 左右りと (ID: dB4i1UE/)

人生みち


「……あなたは……あなたはッ!! わたしに優しくして、信用させて、楽しんでいたんですかッ!」

 鋭い叱責に彼は身を縮こまらせて、視線を背ける。その口はきつく引き結ばれ、血がでそうなほどに噛み締められていた。

「……俺は、そんなつもりじゃ…………」

「そんなつもりじゃなかった? ……じゃあどんなつもりだったんですか!! 心からわたしを想っていたんですか? ならなんでッ…………なんで……わたしを虐めていたんですか……?」

 身を刺すいくつもの言葉。それはすべて急所を撃ち抜き、息をするのも苦しい。これ以上の痛みを感じることは、この先ないだろう。だが、その言葉を放つ彼女の方が、ずっと苦しみに顔を歪め今にも崩れてなくなってしまいそうだ。

 手をのばし彼女を引き寄せ、この腕の中に閉じ込めたい。瞳に閉じ込められた涙をこの手で掬って、すべて開封かいほうしてあげたい。俺の心の内を、すべて曝け出してしま
いたい。そうして彼女に、この初めての気持ちを伝えたい。

 だが、それは叶わない。彼の犯したことは、彼女にとってあまりにも大きすぎた。

「言い訳の一つも、浮かばないんですか? 黙ってないで、何か言いなさいよ!」

「…………っ!」

「そうやって、都合の悪い時は黙って。わたしが記憶を失くしたら、面白いからって優しくする。これだから、貴方が嫌いなんです。嫌い……大っ嫌い!」

 うめき声とも、悲鳴とも聞こえる声に、顔を上げると——目を吊り上げて、唇を白くなるほど噛み締めて、両手を怒りに震わせた——今まで見たことのない彼女がいた。初めて見る表情に胸の奥が少し疼く。こんな時なのに、彼はまだ……彼女の事が好きだった。

「わたし……馬鹿みたい。結局はあなたの一刻いっときの玩具でしかなかった。……本当に、馬鹿みたい。わたしも————あなたも」

 息をすることを忘れるような数秒間———彼女は俺を睨み殺すような視線を突き付けて、そしてくるりと背を向けた。背中がゆっくり、上下する。ふうぅ……と長い息をくと毅然と歩き出した。その足取りはしっかりとしていて、先ほど俺のところへ来た時のようなよろよろした様子は一片もない。

 そして、それは今日一日だけの変化ではなかった。

 彼女と初めて会ったのは、高校1年生のとき。急に変わった世界に恐怖して、びくびくと震えていた。そんな彼女は、クラスカーストの上に立つ女子の格好の餌食となった。そして気が付けば、荷物持ちやパシリは当たり前。女子だけでなく男子も、よってたかって

———俺も、含めて……。

 そして2年生。その年も同じクラスになった俺たち。だが、いつの間にか先頭に立って彼女を虐めていたのは、自分だった。その時は、酒に酔っているように彼女の痛みも、苦しみも、怒りも、何一つ理解せず……いや理解しようともせず、ただ笑っていた。彼女が歪んでいくのを見て、ただ笑っていたのだ。

 今思えば、それからは時間がとても早かった。

 始めはほんの少しの好奇心と、アルコールに似た大量のなにか。酔っていると思っていたのに、我に返れば酔いはとっくに冷めていて、心の奥のさらに奥から彼女が——好きになっていた。


「ははっ…………」

 
 ほんの少し前、大量の爆薬に火がついて轟々と燃えていたとは思えないほどの静けさに、彼の擦れた笑い声が落ちる。重力に従うように落ちて行ったそれは、床へ落ちることはなかった。大火事が彼の立つ床を灼き、底も見えないほどに灼き尽くしてしまったのだ。


「ほんっと…………馬鹿みたいだな、俺……」


 くるりと背を向ける。

 体の、心のうちからすべてを——痛みを、苦しみを、悲しみを、怒りを、疼きを、恋情を——吐き出すように、肺から息を押し出す。そして、静かな空気を鼻から吸い込む。ひんやりと冷たいそれは、肺をちりちりと刺してとても痛い。

 ふぅ……と軽く息を吐き出して、前を見る。真っ直ぐな廊下。振り返れば、道とは思えないほどの険しい人生みちが山を成し、谷を成し、彼の踵につながっているだろう。

 彼が歩むのは、走るのは——目の前の廊下のように——真っ直ぐな人生だろうか。はたまた、彼を成してきた人生と同じように険しい人生だろうか。

 他人ひとの痛みと、自らの痛み、それらを知った彼が、進むのは————


__________________________________The temporary end.

こんにちは、すみませんでした←

「意味わっかんねぇな、この話」
 
そう思ったそこのあなた!!! 大正解です
意味わかんなくていいんです、なんてったって、最終話だけなんですから!!

このお話は、わたしが長編として書こうと思っていた話の最終話なんです
ですが長編を完結させたためしがなく、中身をしっかり考える脳もなく……投稿せずに消そうとしました
ですが、この最終話だけ先に書いているとき……すっごい楽しかったんです

うはっあああああっ↑↑\(゜ロ\)(/ロ゜)/

ってなるくらいに、なのでこれだけ投稿させていただきました。
すみませんでした<(_ _)>

下にあらすじ書いておくので、興味があったらどうぞ
すみませんでした<(_ _)>