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Re: 【クリスマス】お菓子な家の魔女【番外編】 ( No.66 )
日時: 2014/12/28 22:49
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: OcHJFEPy)

あの日以来、ヘンゼルはぱったり来なくなった。
理由は、考えるまでもない。

(やっぱり、ショックだったんだ……団長さんのこと)

ヘンゼルは、ヴェルトンを尊敬していた。
そんな人が人殺しをしていたとなると、そのショックは大きいだろう。
朝早く、マリアがそんなことを考えていると、ノックする音が聞こえた。

(……誰?もしかして、ヘンゼル!?)

「は、はい……どちら様ですか?」

「……私。グレーテル」

「グレーテル!?」

急いで扉を開けると、目を伏せて立っているグレーテルがいた。
少し元気がないようにもみえる。

「……中、入ってもいい?」

「あ、うん、どうぞ……」

少し俯いたまま、グレーテルは椅子に座った。

「どうしたの、突然……」

「……」

マリアが尋ねても、グレーテルは口を開かなかった。

「……お茶、入れるね」

そう言ってキッチンに行こうと後ろを向いたその時、ぐいっと服の裾を引っ張られた。
驚いて振り向くと、今にも泣き出してしまいそうなグレーテルがマリアの服の裾をつまんでいた。

「お兄ちゃんが……っ」

「ヘンゼル……?」

「お兄ちゃん、帰ってきてから様子がおかしくて……ずっと部屋に籠もって、たまにすごい物音がして……それで、私、どうすればいいのかわかんなくて……!!」

帰ってきてから、というのは、おそらくあの日のことだろう。
マリアは驚愕した。
まさか、そこまでダメージを受けていたとは、思っていなかったからだ。

「……大丈夫。ヘンゼルは、すぐ元に戻るよ」

「……本当?」

「ええ、本当」

マリアはグレーテルの頭をそっと撫でた。

「グレーテルは、ヘンゼルのそばにいてあげて?」

「……うん」

マリアはハリーに、グレーテルを見送ってくるよう頼んだ。
そして、グレーテルがいなくなったあと、マリアはあるものを手にした。

(……前にみつけた、多分ここに住んでいた人が置いてったもの……)

それをぎゅっと握りしめ、マリアはある決意をした。

(守られてばっかりじゃ、ダメだ。私も……)

「強く、ならなくちゃ」