コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: どうやら私は魔王さんの家の住民になってしまったようで ( No.3 )
日時: 2014/11/01 16:33
名前: ミカズキ (ID: Z.6cz.ec)

アンティークな馬車が走ったと思えば、それを操るのはアンテナのついた宇宙人で。
とても近代的な洋服を着た男の人と、中世ヨーロッパ風のドレスを着た女の人が歩いていて……
悪魔に天使、鬼にドラキュラ。
実在しないはずの生き物が人間の隣を歩き、色々とおかしい街の中で、私はただ立ち尽くした。

「どうなってるのよ……」

夢かと思い頬をつねるが、ただただ痛いだけでなにも変わらない。
どうしたらいいものか……闇雲に歩いてもなにも変わらなそうだし……

「よォー、お嬢ちゃん」
「俺らと一緒に遊ばねぇか?」

私がおろおろしていると、不意にチャラそうな声と共に肩を叩かれる。
振り向いてみると、そこにいたのはーー

「牛……だと……!?」

体は人間、頭はまんま牛の二人組。
驚いて思わず野太い声が出てしまった。

「うん、牛だよ〜。 ねぇねぇ、遊ぼうよ〜」

しかしチャライ牛人間二人は、私が引き気味なのを知ってか知らずか鼻に付けたピアスを鼻息で震わせながらしつこく迫ってくる。

「えっと……困ります……」

その迫力に、私は逃げようとするが、牛人間は私の肩をがっちり掴んでいてそれは不可能なことだった。
うわぁ、ナンパってどうやって振り切ればいいんだろ。
こんなことは初めてで、心臓がバクバク鳴っているのが自分でも分かった。

どうしたら……いいんだ……!

混乱し始めた私を見てか、牛人間はニヤリと笑った。
その次の瞬間、なにか柔らかいものが私の背中にあてがわれた。

「……ちょっと貴方達! その貧乳娘を離して私のダイナマイトボディーに埋もれなさい!」

そして、その場に響く鋭い声。

「お……お前は……!!」

牛人間が、私の方を見てギョッと目を見開いた。
……あ、いや……正確には私の背中に自身の豊満な胸を押し付けた、目鼻立ちの整った女の人を見て。

「あら、私のことを知っているの? まぁ、私の美貌は有名だし当たり前のことだと思うけど……」

女の人は、私からサッと離れて牛人間に話しかけた。

「知らねぇよ! とりあえずそいつは俺らと遊ぶんだから、そいつから離れろ!」

「……バカねぇー。 こんな貧乳よりもっといい子がいるでしょう?
 私とかカワウソとかマウンテンゴリラとか……さ、貧乳娘、行くわよ」

「……あ……はい」

啖呵を切った牛人間をサラッと流し、女の人は私の手を取り、そのまま駆け出す。
走る度に彼女の長い黒髪はサラサラと揺れ、私の顔にたまに張り付く。
……邪魔だ……

しかし、この人は何者なのだろうか。
私を助けてくれたらしいが、貧乳貧乳うるさいし、なにより知らない人だ。
流れで一緒にいるが、よく考えたらこの人はスゴく怪しい。

「……あ、あの……どこへ行くんですか……?」

私は恐る恐る女の人に話しかけた。