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Re: ハツコイ【オリキャラ募集中】 ( No.61 )
日時: 2016/03/06 12:36
名前: てるてる522 (ID: lKhy8GBa)

〜夏海サイド〜

──静まり返った部屋に私は一人でいる。

リビングのテーブルには〝今日も遅くなります。5000円で好きなものを買ってね〟
……という置手紙。

学校から帰ってきてそのメモを見たときの感想はよく分からない……。

こんな事しょっちゅうあるし。
──何も感じないのがおかしいって事は認める。私もそう思う。

小学校に入ってからはほとんど一人の時間を過ごしてきた。
それは仕方ない事って諦めて居たし……──

寂しいって感情も、怖いって感情も今は無い。

一人の時間は私の時間……。
そう考えると、少しわくわくしてくるくらいだ。

一人のときの唯一の友、ピアノでも弾こうかな……。

そう思って、目を瞑ってショパンの『別れの曲』の楽譜を開いた──

メロディ自体は、難しそうに聞こえないのが、別れの曲の難しいところで、指使いはもちろん、弾き方にも複雑さがある。

でも、今の時間にこの曲を弾くのにはぴったりの時間じゃないかな?

ピアノの鍵盤を見て、楽譜を見てから一度目を閉じた。

私の世界を作り出すには──情景を思い浮かべるには、かなりの集中力が必要になる。


……閉じた目を、静かに開いて私は弾き始める。


雰囲気はでているか、ミスタッチはないか、楽譜どおりに弾けているか
こんな事に耳を傾けて、直していきやっと一つの曲が完成する。

完成までにかかる時間は、この曲とどのくらい真剣に向き合ったかで決まる。


私は、この曲と……そして、クラスの皆と向き合えているのだろうか。 
今の私に、自信を持ってうなずける自信は無い。


でも、向き合ってみようかな。
皆と、佑香と──、そして何より、自分と向き合うことが大切だと思う。

じゃあ、自分のどんな所と向き合っていけばいいんだろう……。

こんな私でも、受け入れてくれた人はたくさんいた。
百合ちゃんに、瑞希に、美佳。──そして、優菜。

私は今の4人にどれだけ救われたんだろう。

──転校初日に私は、教室を飛び出した。
それを、迎えに来てくれた優菜。

私に興味を持ってくれた美佳。

たとえ毒舌でも、私の友達でいてくれる百合ちゃん。

くだらない相談にも乗ってくれる瑞希。


私は、この4人に何かいいことをしたのだろうか。
そして、それはどんなことなのか、真剣に考えるべきではないのか。

私はそんな事を考えて考えて考えた。

やがて、別れの曲の最後が来て、終わった。

こんな事を考えていたからなのだろうか。 曲の雰囲気は合っていた。

でも、何かが足りない気がする。 楽譜どおりに、雰囲気に合った曲を弾いた先の何かが……。

【続く】

byてるてる522