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- Re: ハツコイ【コメント、アドバイス募集!】 ( No.728 )
- 日時: 2016/11/26 18:26
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
〜雄太サイド〜
「おはよう、爺ちゃん」
今日は、今の俺にとっては当たり前のようにやってくる。
でも、よく爺ちゃんは最近「毎日今日が来るのが奇跡だ」なんて言っていたっけ。
少し膝を痛そうにしながら歩く爺ちゃんの背中に手を当てて、心配そうな表情を浮かべて見る婆ちゃん。
……ちょっと言い方が悪いのは分かってるけど、そんなに長くない──って思ってる。けど信じられない。
「雄太、何ボーッとしてる。朝ごはんだよ」
婆ちゃんが振り向いて俺に言った。
「あぁ、すぐ行く」
「なるべく早く済ませて、今日は行きたい場所があるんだ」
そう言う爺ちゃん、確かに服装がいつもと違って……しっかりしているというか……。
「行きたい場所って?」
「あんたの母さんのとこだよ」
──母さん、のとこ。
「俺も……言っていい?」
「もちろんそのつもりだ。嫌だと言っても連れていくつもりだ」
真面目そうな顔でそういう爺ちゃんが少しばかりか、おかしくて……吹き出すのを我慢し切れなくなった。
*
ご飯が食べ終わり、爺ちゃんと婆ちゃんと俺は母さんの元へ向かった。
母さんの元──墓地までは、婆ちゃんの運転で向かった。
窓から流れる住宅街をボーッと見つめて暫くすると、海へ変わった。
「こんなとこに海なんてあるんだ」
思わず、思ったことがそのままこぼれてしまう。
「母さんが、今のお前より小さい時はよく行ってたもんだ。今は環境問題で遊泳禁止だがな……」
後ろから、爺ちゃんが言った──いつもより少し悲しそうに聞こえた。
「それにしても、ここらへんの街並みも来る度来る度に変わっていってますね」
婆ちゃんもハンドルを動かしながら、言う──。
「なんだかすっかり変わってしまったな」
その言葉を言った時の爺ちゃんの顔は見えなかった。
──どんな表情を浮かべて、何を思って言ったかなんて、俺には分からないくらいあるんだろうか。
【続く】
byてるてる522