コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ハツコイ【コメント、アドバイス募集!】 ( No.731 )
- 日時: 2016/12/02 22:44
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
〜雄太サイド〜
婆ちゃんが、ずっとささりっぱなしになっていた花を持ってきた紙に包んでいた。
少し離れたところで爺ちゃんは、線香の束に火を全体的につけようと……少し去年よりも細くなった腕──いや、去年の爺ちゃんの腕なんて見ていなかった。──を振ってい火を強くしていた。
俺はというものの、花を入れるところに入った水を捨てて来てから何をやればいいのか分からずに少し離れたところで見ているだけのところだった。
「俺ちょっとトイレ探してくるわ」
苦し紛れに出たとっさの誤魔化しだった。
「ここの階段を降りてて右にまっすぐいったとこ」という婆ちゃんの声を遠耳に挟んで俺は言われた通り右に曲がった。
と──その時だった。
ちょうどトイレが視界に入ってきた時、目の前の脇から夏海が出てきた。
1人だった……手にバックとバケツを持っていて……俺に気づいた。
なんだか気を使わせてしまったらどうしよう。
──気を利かせてほかの道を探すということくらいすればよかったかな。
墓参りなんて、どの人にとっても楽しいことではないのだから……──。
目が合って、気まずく俯く俺に気づいて夏海がそっと口を開いた。
【続く】
byてるてる522
- Re: ハツコイ【コメント、アドバイス募集!】 ( No.732 )
- 日時: 2016/12/04 19:34
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
〜雄太サイド〜
「雄太も此処にお墓があるの?」
夏海もやはり「聞きづらい」と言った雰囲気を出しながら俺に訪ねてきた。
そういう雰囲気は感じたけれど、逆にいつも通りの様子で聞かれるよりはずっと気持ちが楽だ──俺は「あぁ、母さんの」と答えた。
「私もさ、お父さんとお母さんのお墓があるんだけど、ここが一緒ってことはもしかして私の両親と雄太のお母さんって、近くに住んでたりして……」
もしそうだったら、凄い偶然だと思わない?──といたずらっぽく聞いてくる夏海に胸が高鳴るのを感じた。
「俺の母さんが小さい時、よくここの海に来てたって婆ちゃんと爺ちゃんが言ってた」
「そうなんだ! ……今も行けたりするのかな」
「今は遊泳は出来ないみたいだけど、近くに行くくらいならいいんじゃないか?」
「そっか」
……「うん」というやり取りをして、俺らの間に沈黙が生まれた。
「私はそういう話聞いたことなかったから、もしかしたらお父さんたちも同じだったかもしれないんだなっていう発見できたから、良かった」
えへへ、と笑う夏海はいつもみたいな笑顔だったけどちょっと寂しそうだった。
──目尻から透明に透き通った涙がこぼれた。
「ごめん雄太。別に雄太は悪くないんだけど、私ってやっぱり何にもお父さんたちのこと知らないんだなぁって思って悲しくなってきちゃった」
俺は何も言えなかった。
──「そんなことない」という言葉は、違う。
「なんかまだ雄太と出会う前──百合たちもそうだけど、私本当に人とかと話さなくて、すれ違った人に挨拶されても無視するような子供だったしそんなんだから友達もできないし……家族にも心閉ざしてたし──」
柔らかい風が俺と夏海をそっと包んだ。
夏海のもう片方の瞳からも、涙がこぼれ落ちた。
「私って、お父さんとお母さんと一緒に過ごしていた時……なに見て生きてたんだろうね──」
涙をこぼしながら、夏海は笑った。
「そんなに」
俺はずっと俯いて聞いていた顔を起こして、前にいる夏海を見た。
「……そんなに自分を責めないでもいいんだよ」
確かに夏海が思っている後悔は大きいものだ。
だけど、それは夏海だけが悪いんじゃない。
──全く悪くないわけでもない。
でも、そんなに自分を責めないで欲しい。
……よく分からないけど、今の夏海は少し高いところへ行けばどこかに飛び降りてしまいそうな、そんな雰囲気があった。
「なにかあるなら俺は聞くし」
力になれるか分からないけれど……俺らは親を亡くしてる。
──でも大きく違うのは「覚えているか」「覚えていないか」……。
【続く】
こんばんは作者です。
この土日はかなり頻繁にカキコに来ていました。
色々あったこの「お墓」と「2人の家族」がメインの話ですが、少しずつ明るくなればいいなって思ってます!
今回は1000文字越えですよー←
byてるてる522