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Re: RAINBOW【合作短編集】 ( No.24 )
日時: 2014/11/24 22:16
名前: 夕陽 (ID: jP/CIWxs)

独りの狐と人気者の狸2

 原因は、亜美の好きな人が私に告白してきただろうか。
 そのことを知った彼女は、怒るわけでもなく泣くわけでもなく無表情だった。
 その表情は今でも覚えている。

 その人は丁寧に断った。
 そうすれば亜美と仲直りできると信じて疑わなかったから。

 でも現実はそんなに甘くはなかった。

     *     *     *

 無視されるようになってから数ヵ月後、卒業式があった。
 これでやっとあの居心地の悪い空気から解放されると思うととても嬉しい。
 彼女の志望校は恐らく底辺だろうから高校一緒の可能性低いし。

 私は清清しい気分で最後に校門をくぐった。

     *     *     *

 しかし、その相手が今目の前にいる。

 なんで? あの子の成績じゃ受からないはずなのに。

 どう考えても彼女の成績ではこの高校の3ランク下でも努力圏のはずなのに……。
 5ヶ月でここまで成績を上げたというのか。
 信じられないことだが。

 まあ彼女に関らなければいい話だ。

 私はそう決意して机に伏せた。

     *     *     *

 なんのいやがらせ?

 私は下駄箱に置いてあった手紙を見てため息をつく。
 タヌキのキャラクターがついているこのレターセットは私が誕生日に彼女にあげたものだ。
 少し間抜けな感じが彼女に似ていてつい買ってしまった。

 それが今私の手の中にある。
 二つに折られた便箋にはこうつづられていた。

『もしよかったら、4時に喫茶店に来てください。いつもの、喫茶店で待ってます』

 独特な少し大きくて丸い字でつづられていた文章。
 私は少し考える。

 一体彼女は何がしたいのだ?
 謝りたいというのはないと思う。
 かといって憎まれているわけでもない。
 ただの“クラスメイト”に戻ったみたいに空気扱いはされているがいじめはないし。

 チラリと時計を見る。
 今、午後2時半。
 今日は初日だったが結構長かった。
 自分の家に帰るのに40分、自分の家から喫茶店まで自転車で5分。
 十分間に合う。

 私は自分の家に帰るためにバス停へ向かった。

     *     *     *

「来てくれてありがとう」

 亜美は4時ぴったりに来た。
 こっちは10分前から待っているのに。
 昔からそうだったけど。

「で、用件はなんですか?」

 私は“普通のクラスメイト”とはなすように他人行儀に訊ねる。

「あのね、昔のこと謝りに来たの」

 今更だな、と思いつつまあそこで怒ってもしょうがないので無言を貫く。

「あの時、好絵ちゃんに近づいたのは好きな人が好絵ちゃんに興味持っていたからなの。ごめんなさい」

 なるほど。道理で目立たない私に優しくしてくれたわけだ。

「はじめはそれだけだったけど……。でも好絵ちゃんに接するうちにいい子だって気付いて、それでもあの人のこと好きで諦められなくて……。好絵ちゃんが告白されたって聞いたとき悪気はないんだって思っても無視までして。応援してもらったのに」

 彼女はうつむいて話す。
 今彼女はどんな顔をしているのだろう。

「別にいいよ。もう気にしてないし」

 実際私は気にしてない。

「でも、よくこの高校は入れたね。確かあなたの好きな人はもう一つしたのランク受けなかったっけ?」
「そうだけど、好絵ちゃんと仲直りしたいからがんばったの。勉強毎日して。合格できるように」

 亜美ってそんなに努力家だったっけ?
 いつでも努力もせずでも愛想がよかったので結局は許されている子だったはずだけど。

「すごいね、亜美。私と仲直りするために勉強がんばったのはすごいと思う」
「だったら、私ともう一度やり直してくれる!?」

 いきなり身を乗り出す亜美に私は

「それとこれとは話が別。私は独りがいいの」
「じゃ、じゃあどうすれば私とやり直してくれる!? もっと頭がよくなればいい? もう無視しないって誓えばいい?」
「別に亜美が悪いわけじゃないよ。でも亜美は仲いい子がもういるでしょ? その子たち大事にしなきゃダメだよ」

 教えるようにゆっくりという。
 その言葉に納得してない表情の亜美に私は決定的な一言を放った。

「だって私、美穂ちゃんうざいと思うし」

 記憶に残っている亜美と友達になったであろう彼女の名前を出す。
 亜美は昔から自分の友達の悪口を言われるのが嫌いだったから。

「何でそんなこというの……? 美穂、いい人なのに……」

 震え交じりのその言葉にわたしの胸が痛くなったが彼女のためだ。

「じゃあそういうことで」

 私は無表情を保ちつつ喫茶店をでた。

 これが彼女のためなんだ、と信じて。

 だって私は

——もう余命が1年もないのだから。

—END—
あとがき
別れが辛いのであえて友達にひどいことを言う……という感じを書こうとしましたが上手く出来たでしょうか?
ちょっとおかしいところあると思いますが気にしないで下さい。

さゆ
次のお題!
登場人物3人以上5人以下。
文字数2000字以上。

で書いてください!
指定されているもの以外は何でもオッケー。
文字は制限かかるようだったらレス分けてください!

じゃあ楽しみにしてるよ!