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Re: RAINBOW【合作短編集】 ( No.34 )
日時: 2015/01/12 23:21
名前: 夕陽 (ID: jP/CIWxs)

雪の妖精

 妖精って信じる?
 俺は信じている。
 だって、5歳の時本当に会ったから。

     *     *     *

 その日は雪が降っていた。
 大降り、ってわけではないけどそこそこ積もっていて歩くのが大変だった。

 歩いていたがやっぱりすぐこけて大泣きしていた。
 その時だった、妖精さんが声をかけてくれたのは。

「大丈夫?」

 涙が止まらない目で上を見上げるとぼやけた白いものが見えた。
 一瞬幽霊が現れたかと思った。
 涙をぬぐうとその白いものは白い服を着たお姉さんってことが分かった。
 肌も新雪のように綺麗で雪の妖精だ、と本気で思った。

「立てる?」

 優しげな笑みを浮かべて手を差し伸べてくれる彼女に

「べ、別に立てるし!」

 少し恥ずかしくて自分の手で立つ。

「そっか、偉いね」

 そのお姉さん(今度から雪の妖精さんと呼ぼう)が僕の頭をなでてきた。

「それくらい当たり前だし!」

 なんとなく意地を張ってその場は帰った。

     *     *     *

 その雪の妖精さんが隣に引っ越してきたのを知ったのは1週間後だった。
 挨拶に来たとき俺は驚いて

「ゆ、雪の妖精さん!」

 と叫んでしまって驚かれたっけ。
 雪の妖精さんは俺が怪我した時の様に優しく笑って

「雪の妖精さんか〜。君、面白いね」

 その笑顔に俺は憧れてしまった。
 こんな風になりたいと思ったんだ。

     *     *     *

 その憧れが好意に変わり恋に変わったのはいつのことだっただろう?
 多分中学生の頃だろうか。
 その頃雪の妖精さん(本名は幸と書いてゆきと読むらしい)は大学生だった。
 家庭教師代わりに来てもらいいろんなことを教えてもらった。
 中学を卒業する時思いを伝えようと決めた。

 けど、その前に彼女に彼氏が出来たことを知ってしまったんだ。

「すっごく優しくてね、いい人なんだよ」

 とろけそうな笑顔で言われた時世界から色を失ったような感じがした。
 でも、好きな人が嬉しがっているならその方がいい。
 俺は自分の気持ちを押し殺した。

     *     *     *

 そして今。
 成人式を迎えた次の日、たまたま幸さんと会った。

「ちょっと飲みませんか?」

 その言葉に幸さんは快く承諾してくれた。
 幸さんの左手の薬指は何も飾られていなかった。

     *     *     *

「付き合っている人、いないんですか?」

 俺はこの言葉を言った時後悔した。
 折角忘れるって決めたのに。

「うん、今は。和馬君はどうなの?」

 冗談ぽく聞いてくる彼女に

「俺もですよ」

 と笑う。
 彼氏がいないと聞いて安心した気もするが素直に喜べない。
 あんなに嬉しそうに話していたのに。

「この年で独身はそろそろやばいなあ」

 苦笑いする幸さん。
 顔に赤みが差してきた。
 どうやら酔ってきたらしい。

「確かにそうっすね」

 会話が止まる。
 ちびちびと酒を飲むだけの時間が過ぎてゆく。

「そろそろ帰ろうか」

 この言葉で俺たちは会計をして帰ることにした。
 はじめどちらも払うといって聞かなかったが無理矢理俺が奢ることにした。

「ごめんね、奢ってもらっちゃって」
「別にいいっすよ」

 そう言って店から出ると雨が降っていた。
 さっきは降ってなかったのに……。

 困った顔をしていたのと今の状況で幸さんは何か察したようだった。

「もしよかったら使って」

 そう言って渡されたのはビニール傘。コンビニとかで売っているような透明のもの。

「でも幸さんは……?」

 このままぬれて帰るのは後々大変だろう。

「大丈夫、これがあるから」

 そう言って花柄の折り畳み傘を取り出す。

「じゃあね、和馬君」

 そう言って帰ろうとする幸さん。
 なんだかこのまま帰らせたら二度と会えない様な気がして腕をつかむ。

「どうしたの?」

 不思議そうな顔をする幸さんに俺はこう告げる。

「俺、幸さんのこと好きでした」

 なぜこれを言ったのかわからない。
 酔いは恐ろしいなと頭の隅で考える。

「そう言ってくれてありがとう。でも、好きな人がいるから」

 その好きな人って前付き合っていた人ですか?
 まだその人のこと想っているんですか?
 そう聞きたかった。
 でもその前に彼女は少し寂しそうな笑顔を残し彼女は去っていった。

 きれかけの蛍光灯のようにチカチカしている青信号を渡る彼女を俺は呆然と見ていた。

     *     *     *

 その日から彼女に会うことは無くなった。
 どうやら引っ越してしまったらしい。
 なんだか気持ちが曖昧のまま別れてしまったので少し割り切れない気持ちがしたがどうやら彼女は冬に一回帰ってくるという。

 やっぱり彼女は雪の妖精ではないだろうか?

     *     *     *
あとがき
なんか意味不明な話になってしまいました……。
深夜テンションって怖いですね……。(文才のなさも怖い……)

さゆ
次のお題!
「鞄」「プリン」「やかん」
で三題噺!
字数・ジャンルは自由で。
よろしく!