コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: アニメイトには、花が咲く。 ( No.5 )
- 日時: 2014/12/28 15:31
- 名前: アカネ (ID: dBGHGSaq)
02
「…」
(お願いなので一言くらい喋ってくださいィィ!)
僕は今現在、アニメイトの一角でサングラスにパーカーを被っている怪しい人物と見つめあっていた。
いや見つめあうとかだと誤解を招きそうだが、サングラスさんとは一切面識はない。キャラグッズを取ったらたまたま手がぶつかっただけである。
そこで普通ならどちらかがどちらかに商品を譲って終わるだろう。僕も最初は驚いたが、そういう展開になるんだろうと予想した。
ただし、予想というのは外れるためにある。
僕自身はさっさと退散したいのだが、サングラスさんにこうも凝視されたら動けない。サングラスさんは言葉を発っしていない。
このサングラスさん、フードのせいで顔自体しっかりと確認できないのだ。もしこの人が限りなく低い確率で犯罪者だったら危ない。フード+サングラスなんて、典型の銀行強盗らしいし。
僕は優柔不断のヘタレ。それは自覚しているが、ここは性別すら不明のこの方といて時間を潰すのも嫌だ。
僕は意を決して、サングラスさんに声をかける。
「あの、すいません。そのストラップ、僕そんなに欲しかったんじゃないのでお譲りします」
「…有り難うございます」
短い沈黙の後、不自然に掠れた声が聞こえた。声質的にはおそらく女性だろう。風邪気味なのかもしれない。だから重装備だったのだろうか。
しかしここで有り難うございます、ときたか。じゃあ大丈夫だろう。きっとコスプレイヤーさんの筈だ。
僕はそう片付けて、かなり名残惜しいがシルヴィアちゃんのストラップをその人に渡した。
「じゃあ、本当にすみませんでした…」
「ああ、いや、ハイ」
「では…」
最後まで三点リーダの多い人だ、などと謎な感想を抱きながら僕は早足でその場から去ろうとする。
アニメイトではたまにありそうな事件で、双方ともすぐに忘れるだろう。こういう咄嗟の切り返しが下手な、コミュニケーション障害なりかけの僕にはあの会話はキツかった。向こうはやたらと早口だったしな。
そうして僕はそのまま歩くーが。
「ひゃあっ?!」
「ちょっとヤマト、走り回っちゃダメっ!そこの人、お怪我は?」
このアニメイトは、普通のショッピングセンターの中にある。
一般人も好奇心でたまにやってくるのだ。それが普通の大人ならいいが、ショッピングセンターの一般フロア、つまり幼い子供もいるのである。
それも、突然店内に走り込んできてタックルをかましてくるような男子が。
僕も前に被害にあい、それ以来は気をつけていたのだ。どうやらサングラスさんが被害にあったのだろう、悲鳴が聞こえた。
子供と母親らしき声がして、母親はすぐに子供と一緒に出ていったようだ。
このまま見逃してはいけない。すぐ後ろで倒れた人をほったらかしておくのは、流石に酷い。
僕は振り返り手を貸そうと考えたのだが、そこには思考の斜め上の光景が広がっていた。
ぬげた灰色フード。
外れた濃い色のサングラス、冬なのにサングラスをつける理由はわからない。
当初からえらくすっと通った鼻筋ははっきり見てとれた。
ペタッと座り込んでいるのは紛れもなく、
「東雲、さん」
「…久野君」
大変気まずそうに目を逸らす、僕の高校一の美人で全校生徒の憧れの的のクラスメイトの、
東雲雪乃さんだった。
見間違いかとも思った。ぼっちな僕に才色兼備な東雲さんとの関わりはないから。
だけどこの、艶やかな長い黒髪に長い睫毛にふちどられた瞳、誰が見ても美人と答える顔。
ごめん、東雲さん。
どうしてここにいるのか、なんで変な服装だったのかは聞きたいけど。
ちょっと混乱しているので、詳しい説明を誰かぷりーず!