コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: アニメイトには、花が咲く。[参照百突破感謝] ( No.11 )
- 日時: 2014/12/28 15:34
- 名前: アカネ (ID: dBGHGSaq)
03
東雲雪乃さん、それは僕の通う高校の頂点に君臨すると言っても過言ではない方だ。
女神か天使かと思ってしまうほど整った顔立ち。僕は黒髪黒目の印象薄い系男子なので比べ物にならない。
成績は学年トップクラスで、運動神経も抜群。あちこちの部から助っ人要請が来ているらしい。
おまけにファンクラブ<雪乃様親衛隊>とかいうグループもあるようだ。東雲さんはつまり、そんな高校の人気者なのである。
だから、僕は余計に戸惑う。
東雲さんは文武両道な高校のアイドルだ。そんな彼女が、どうして変装までしてアニメイトに来ているのかと。
さっき僕の名前を呼んでくれたのも、ただ単に同じクラスだからだろう。話した経験はない。
東雲さん本人は小刻みに震えながら視線をあっちこっちにさまよわしてるし。
これはヤバい、そう察したのか周りの人はいつの間にか忽然と消えている。ギャラリーがないだけマシはマシなのか、それでもたいして救いはない。
「あっ、あっ、その、東雲さんここじゃなんだしちょっといどーしない?どうせならさ、珈琲とかケーキ食べて話そうよ」
東雲さんがまだマスクさんだった時に話し掛けたのよりも緊張した。そりゃあそうだ。
でも相手が東雲さんだと分かっている分、恥ずかしさは倍増だ。おもいっきり噛んでしまったし、きっと僕の顔は耳まで真っ赤に染まっている。
「あはは、ごめんね久野君。私、この後大きな用事があるんだ、だから久野君の魅力的なお誘いには頷けない」
東雲さんはすっくと立ち上がる。
170は越えている僕と、あまり身長が変わらない。
だが次の東雲さんの行動にまたもや僕は驚いた。
「ごめん、じゃあね!」
「え、ちょっとどうしたんですか東雲さん?!怪我とか、してないんですかー!」
たったったっ。
瞬時にフードをかぶり直した東雲さんは、スニーカーを跳ねさせて駆けていってしまう。
僕が伸ばした手は東雲さんの服を掴めずに、空気が虚しくすり抜けていった。正直東雲さんの運動神経は僕よりも上なので、追いかけても勝てなさそうだ。
「ああ、行っちゃった…どうしよう」
東雲さんの姿が完全に見えなくなるまで、数秒しかかからなかった。
その間、フリーズしていた僕だが慌てて再起動する。遠目からこちらを伺っているのか、「アニメイトで告白して振られた馬鹿な奴」的な目線がちらほらある。
そういう訳じゃあない。釣り合わないしな。しかし、色々気になっていた東雲さんがいなくなるとする事がなくなってしまった。
残ったのは、東雲さんが落としていったシルヴィアちゃんのストラップだけだ。
ヤンデレ笑顔を向けてくるシルヴィアちゃんストラップを、僕はそっと持ち上げる。
「…取り敢えず、ストラップ買いますか」
東雲さんには、僕の中で超絶美人から謎の美人へと評価が変わった。
だけど癒しとして、僕はまず現実から二次元へと逃避する。
後今更ながら、珈琲やケーキ食べようよって僕は下手なナンパかなんかのつもりだったのか。