コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: アニメイトには、花が咲く。 ( No.12 )
- 日時: 2014/12/28 15:31
- 名前: アカネ (ID: dBGHGSaq)
04
仮に、僕がクラスメイトに『東雲雪乃さんってどんな人?』と尋ねたとしよう。
その場合、
「完璧超人が服を着て歩いてる。ホントに非の打ち所がないよねぇ」
「雪乃様は貴様のような輩には渡さん!」
「私、東雲さんみたいになりたいよ」
こんな感じの、三者三様ながらもとにかく東雲さんは人気があるといった事が分かるような返事が返ってくるだろう。
あと、前述した雪乃様親衛隊は、非公式のファンクラブだ。だけど、東雲さんへの憧れが暴走してしまった生徒がたくさんいるので、基本的に"雪乃様至上主義!"な脳内構造の人が多い。
普段は真面目な人がかなりいるって所も、東雲さんがどれだけ人気か理解して頂けるだろう。
だけど、一番の問題点はそこじゃあない。
「今日、どんな感じで東雲さんと顔を会わせればいいんだろう…ああっもう、どうして家が近いんだ」
僕は自分の部屋の中にで肩を落とす。
日曜日、あんなに気まずい別れ方をしてしまった東雲さん。接点は殆どないのだが、実は僕の家と東雲さんの家はわりと近い。東雲さんは実家もお金持ちらしく、この住宅街の中に和風のお屋敷がそびえているのだ。
僕の家とそのお屋敷の距離は、歩いて一分もかからない。
だからこそ、僕は途中で東雲さんに鉢合わせする可能性に怯えていた。
その時だ。
「奏太に用事あるみたい、玄関に可愛い女の子が来てるよ〜」
「え、分かった。母さんすぐに行くから、待っててもらって!」
「早く降りてきなさい。着替えはすんでるんでしょ?」
間延びした母の声が、僕を呼んだ。
どうやらこんな時間帯に、来客がいるらしい。
その瞬間、僕の脳裏にあまりにも悪い想像がよぎる。
ーひょっとして、その可愛い女の子ってまさかまさか東雲さんじゃないよね!
有り得ない。
かもしれない。
僕は階段から下に降りていき、そして玄関へと向かう。
そこで目にしたのは、やっぱりというか東雲さんだった。
内心叫びたいのを必死で堪えながら、僕は営業スマイルを浮かべてみる。
口元ひきつってるけど。
「おっ、おはよう、東雲さん。ご機嫌はどうかな」
「やだあ、奏太君たらご機嫌はどうかななんて面白い。私、今度からはちゃんと名前で呼んでって言ったじゃない。それに、一緒に登下校しようって」
「うわあっ、て、東雲さんどうしたんですか?!腕にしがみつくなんて東雲さんが穢れますよ、離れてェェー!」
「だーめ」
柔らかい香りが、僕の鼻腔をくすぐっている。
端正な顔が僕の顔すぐそばにあって、さっきから心臓の鼓動が早い。
僕は前東雲さんをアニメイトで見つけた時よりも緊張しているのだ。 あの東雲さんが、僕の腕にしがみついているのだから。
(ちょ、どういう事なんだッ)
暫くまたパニックだったが、僕はこの場にいる母を思い出してそちらに助けを求めようとする。
だけどその僅かな希望は、砕け散ってしまった。
「うふふ、うふふ。そうね奏太もそんなお年頃だもんね?えーっと、東雲さんだったかしら。奏太をお願いね」
「はい!私は東雲雪乃、お母さん、私が奏太君をしっかり守ります」
「あらあら、頼もしいわ。今度遊びに来てくださいな、雪乃ちゃん」
にやにやと気持ち悪い笑みを浮かべる母さんと、天使のようなオーラを振り撒く東雲さん。
女性同士の会話が盛り上がるさなか、僕はやっぱり展開についていけずにぼーっと立っていた。
母さんは勘違いしてる。父さんは既に出勤してたから、まだ助かったのか。
東雲さんは、僕の彼女でもなんでもないのに。
一言。
神様、僕はどうすればいいのでしょうか。