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- Re: 心魂盟奴 〜ソウルメイド〜 ( No.5 )
- 日時: 2015/07/19 19:42
- 名前: Frill (ID: 6Z5x02.Q)
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元々昔からゲームは好きなほうだ。
今まで色んなジャンルのゲームをプレイしてきたが、やはりロールプレイングが自分には合っていたと思う。
定番で王道のものから、コアでマニアックなものも数多くこなしてきたと自負できる。
その中でもこのネットゲーム『心魂盟奴』は良作だった。
とりわけこのゲーム最大のウリであるパートナーであるメイドの育成は燃えた、いや、萌えた。
しかし似た様な育成ゲームは数あれど、これほど自身の琴線を震わせ深く刺激したものは他には無かった。
自分はリアルでは爽やかイケメンな好青年で通っている。務める商社でも割と評判が良く、上司や同僚からも受けは良い。
しかし浮いた話は一切無い。
自慢じゃないが異性からの誘いは引く手数多だ。が、色々理由を付けて断っている。
別に女性が嫌いという訳では無い。だからって男色でもない。ソッチの気は無い、いたってノーマルでエロ好きな普通の男だ。
ただ単に現実の女に辟易し、嫌気が然していただけだ。
その点このゲームは素晴らしい。
自分の好みの女の子、容姿から性格まで一からを創造し、一緒に冒険をする。
そして更にリアル3Dの美麗なグラフィックは現実では在り得ないほどの倒錯をもたらした。
こうして己の現実離れは加速し、よりいっそうバーチャル、仮想世界の中へとのめり込ませたのだ。
「・・・俺はこのゲームが好きだ。最早生き甲斐だ。愛してると言っても過言ではない。それに此処には俺の愛するパートナー達が、彼女達がいる。俺はこの世界で生きていきたい、むしろこの世界が終わるなら、現実世界なんて・・・」
イクスが遠い眼差しで、まざまざと想いを馳せるのを女神は優しく見守っていたいたが、その表情が少しだけ思い詰めたものに変わる。
「・・・やはり私の目は間違っていはいませんでしたね。貴方ならば失われし世界の行く末を担う事が出来る筈です」
女神の言葉にイクスは首を傾げる。
「? どういう事だ」
「この世界の停滞に伴い、私の神としての干渉力も極度に弱まってきました。いずれ殆どの力を失ってしまうでしょう。そうなる前に私の残された神力でこのヴァルハラルを『在るべきもの』へと転生させます」
女神フリージアは意を決したように力強く告げるとその眼差しを目の前の青年に向ける。
「願わくば、貴方にも異界の加護があらんことを・・・」
「何を言って————」
イクスは女神の金と青の双眸に見つめられながらその意識が徐々に朦朧としてきていたのに気付いた。
だが、ゆっくりと迫る暗闇が彼の疑問も女神の姿も薄れいく狭間の波に飲み込んで消し去ってしまったのであった。