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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 焼き餅は美味しくなくなくないのです【短編】 ( No.18 )
- 日時: 2014/12/18 17:06
- 名前: あめしぐれ ◆adhRKFl5jU (ID: vlOajkQO)
「……そっか。俺はほなつ。寺本歩夏。」
「生まれたときかられいの家の隣の家に住んでる。」
「保育園も小学校も同じ。ずっと同じクラス。」
「出席番号もいつも近いから、女子のなかではお前が一番仲が良かった。
お前がどうだったのかは知らねーけど。」
歩夏くんは、笑って話してくれた。
でも、笑っていなかった。悲しさが混じったような笑顔だった。
私にとって歩夏くんは、どういう存在だったのかな。どんなことを話したかな。まったく分からないけれど、仲良くしたいな……。
「え、えっと、わざわざ自己紹介してくれて、ありがとう。」
「おう。何か思い出せたら教えてな。メアドも交換してるし。」
「あと、敬語とかほなつ“くん”はやめる。OK?」
私はコクコクと黙って頷いた。
そう言って歩夏く……歩夏は立ち上がった。
「なんかあったら連絡してください」ってお母さんに言って、扉の取っ手に手を掛けている。
そうだ、これは言っておかなければ……!
「あ、あ、えっと、歩夏く……歩夏!」
「ん? どうした? もう何か思い出した!?」
期待が込められたキラキラした目で、こちらに勢いよく振り返られた。な、なんか言いにくいけど……頑張れ、怜彩……!
「えと、傷付けちゃったみたいでごめんな……ごめんね。思い出せるように努力するから、だから、えっと……。」
「来てくれてどうも、ありがとう。また来てね、思い出せるかもしれないから。」
外では 何の濁りもない真っ白な雪のなかに
ただの三色ボールペンが落ちていた。
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