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- Re: 魔断聖鎧ヴェルゼファー ( No.1 )
- 日時: 2014/12/11 22:01
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: zc76bp3U)
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【第一幕】
謳われしもの 目覚めよ、と呼ぶ声あり
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『・・・・・・・・』
すべてを飲み込み揺蕩う奈落を思わせる純黒の深淵。
微塵の残光すらも存在しない暗黒が住まう何処までも隔てる常闇の中。
天上か地上か、平行空間が確立不能な、次元事象が定かではない曖昧な虚無の領域。
それは静かに冷たい闇に身体を横たわらせていた。
真白い淡雪のごとく浮かぶ華奢な矮躯。
透き通るような流れる鮮やかな長い白銀の麗髪。
少女。
眠っているのだろうか、時折鼓動する小さな胸の膨らみが上下する。
唯そこに在り続ける。
暗闇に黙し、閉ざされた世界で白き少女は微睡む。
夢見せるは悠久の安息か、それとも別の何か。
どれ程の長い時が刻まれたのか、時間という概念を有するならばほんの僅かな間かもしれない。
もしくは気が遠くなる程の時が過ぎ去ったかもしれない。
無限とも思える黒き冥夜の帳にほんの少しの光が垣間見えた。
そして同時に聞こえ鳴り響く鐘の音。
光の帯は徐々に大きく長くなり、横たわる少女を優しく労わるかのように緩やかに包み込む。
連捷する鐘の音色がまるで少女を目覚め迎えるかのように打ち鳴らされ木霊する。
瞼に映える長い美しい睫毛が震え、薄っすらとその可憐な眦を開く。
白く際立った肌に彩られた桜色の裸唇が動き、何かを囁く。
『・・・・・・・』
翳された細い今にも手折れてしまいそうな指先が伸び射す光明を掴み取ろうと差し出される。
悠久の眠りから、今まさに覚めようとする黎明の少女。
それは世界にとって救いとなる福音の調べか。
望む、望むまいとこれから訪れるであろう未来の行方は、神のみぞ知り得る事かもしれない。
果たして——————。