コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 魔断聖鎧ヴェルゼファー ( No.12 )
- 日時: 2015/02/08 19:34
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 3EnE6O2j)
・・・・・・。
深く深く最奥へと続く地下への階段。
一歩一歩、一段一段下るたびに地上の光りが閉ざされ、僅かな残滓が二人の若者の影を揺らす。
魔導光ランタンを片手に手探りで先頭を進むロベルトと周囲を用心深く警戒してその後ろから殿を務めるハンス。
深部へと渡る仄暗い無機質な回廊は思いの外広く造られており、徐々にだが最深層と思しき場所に近付いていることが感じ取れ、ハンスとロベルトにも何とも言い知れない緊張感が流れた。
「・・・思ったより広いな。方角と距離から推測してちょうど地上の石碑の真下辺りだろうか」
方位磁石を調べ確認するロベルト。地上の遺跡構造とは造りが違うのか、地下は明りの類が無くロベルトとハンスが持つ魔光ランタンの灯火が薄く辺りを照らし出していた。
「・・・確かに広いが、こう暗くちゃ探索のしようがないぞ。それに何か発見しても流石にここまで鎧機を運びこむのは無理だ。本来なら一度戻ったほうがいいんだが、生憎俺たちには時間も余裕も無い」
ハンスは咥え煙草で魔光ランタンを翳し照らす。
「そうだな。此処まで至る道筋は粗方地図に書き記した。レンタルしたガルデンの魔導燃料も僅かだろうから、一端戻るのも選択の内だろう。まあ、組合の連中には話せば筋は通るだろうし、言い訳も立って首の皮一枚で繋がる、かもしれない。・・・多分、な」
ロベルトは前方に注意しつつ、辺りを探る。
発掘屋としてこの未踏の遺跡を発見しただけでもお手柄だが、正直このまま手ぶらで帰るには忍びない。先程のあの投影装置だけでも至玉の一品だが、出来れば形ある物を戦利品として持ち帰りたいのが本音だ。
古代の遺産はどれもが貴重品。とりわけ鎧機に関する遺物が重宝される。せめて高性能な駆動部品の一部分でも見つかれば自分たちの借金の帳尻を合わせるとともに発掘屋としても箔が付くのだが。
二人は時間とこれからの事を気にしながらも薄暗い空間を手持ちの明りだけで照らして周囲を見渡す。
何か、何かないか。
祈る気持ちににも似た焦燥感に突き動かされ探索の手を進める。
「・・・? あれは・・・?」
それは棺だった。
石棺である。
中央に備え付けられた台座に固定されており、古びて装飾は皆無だが、どこか気品があり、まるで王族の高貴なる者を祀るように弔われていた。
「棺桶、だと? なんでこんな所に・・・」
ハンスが訝しげに棺に歩み寄る。
「・・・この棺のちょうど真上にはあの石碑が立っていた。何か関係があるのかもしれない。・・・開けてみよう、ハンス」
ロベルトの言葉に石棺の外周を調べていたハンスが頷いた。
二人は互いに重く閉ざす石棺の蓋に手をかける。
幸い石棺は本物の石材で構築されていて、鍵や罠の類は見当たらない。念入りに調べたから大丈夫と判断した。
両手に渾身の力を籠めて全体重を預け石棺の大きな蓋を動かす二人。
「いくぞっ! せぇーのっっ!!」
ハンスの合図で巨大な石の棺の長方形がずらされていく。
少しずつ動く重量感ある石蓋が大きな音を立て、落ちる。
「な、なんだこりゃ!?」
「これは・・・!?」
覆う蓋が取り外された石棺の中、そこにあったのは・・・。
白い奇妙なボディスーツに彩られたとても美しい銀髪の少女の姿だった。