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- Re: 魔断聖鎧ヴェルゼファー ( No.13 )
- 日時: 2015/02/11 13:41
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: yLoR1.nb)
真っ白な少女。
地下大広間の石棺に納められていたのは、見目麗しい銀髪の乙女。
眠るような幼気に瞼を閉ざし、両の手の拳は祈るように胸元に組まれている。
「おい・・・これは何の冗談なんだ? なんでこんな遺跡の地下の棺桶に子供が入っているんだ? ・・・勘弁してくれ、この遺跡は解らない事が多すぎるぜ・・・」
お宝だと思って勢いよく開けたら予想の遥か斜め上をいく結果に頭を振るハンス。溜息を吐きつつ、両手をお手上げのポーズにする。
一方ロベルトはこの事態に多少なりとも面喰ったが、驚きつつも慎重に棺の中に横たわる少女の頬に触れてみる。
「・・・遺跡に閉じ込められて行方知れずになる探索者の話はよくあるが、この子はどこか違う。そもそもこの重厚な石棺の中にどうやって入ったのか・・・あるいは何者か、他の第三者によって閉じ込められた、のかもしれない。そうでないとすれば古代人の亡骸か・・・」
ロベルトの指先から感じる少女の肌の感触はまるで生きている人間そのものだった。
傍から見れば本当に眠っているかのように映るだろう。
しかし生者とは決定的に異なる点がある。
体温は限り無く低い。それも極端に。
むしろ皆無に等しい。氷のような冷たさだ。
つまりこの少女の生命活動は停止している。要するに既に死んでいる、という事が理解できた。
地下遺跡に鎮座する厳かな霊柩。
文字通りこの棺は少女の墓標だったのだろう。
恐らくこの石棺も古代技術の科学力で遺体の腐敗を防ぐ何らかの保存処置が施されていたのだろう。
しかしなぜ態々このような場所に葬られたのか。
そもそもこの少女の存在自体が謎である。
古代人の遺骸は化石やミイラとして発見される事は多々ある。仮にこの少女が古代人の誰かによって埋葬されたとしても不思議ではない。
それでもこのような形で見た目には欠損も無く、完璧な状態で発見された例は今までに無かった。
たまたま運良く見つかっただけで、他にも存在するのかもしれない。
「・・・・・・」
ロベルトはジッと棺に納まる少女を見つめる。
違和感を感じるのだ。
判別しがたい『何か』だが、先程から、この少女を見た時から奇妙な感覚に陥っている自分に気が付いていた。
既視感、とでも言うべきか。
ずっと昔にも、こんな光景があったような————。
「・・・・・・い、おい、ロベルト? どうした? 顔色が悪いぞ、真っ青だ。・・・俺たちは長居しすぎたみたいだ、一先ず戻って改めて準備してから探索したほうがよさそうだな」
ハンスに呼び掛けられ、その肩を少し揺さぶられてハッと我に返るロベルト。
「あ、ああ。そうだな。これ以上の強行軍は危険だろう。探索は後日に・・・」
ロベルトがハンスの意見に頷き踵を返そうとした時、それは起こった。
遺跡が大きく震えたのだ。
いや、震えたなんてものではない。
突き上げるように揺れ動き、次第に立っているのもままならない程に大きく振動を始め————
遺跡が崩れ出した。