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- Re: 魔断聖鎧ヴェルゼファー ( No.18 )
- 日時: 2016/06/16 22:05
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: CwTdFiZy)
漂う。
何もない、真っ暗な世界に白い少女がひとり。
ただ揺ら揺らと、浮かぶ。
とても永い時間をそうして過ごしてきたのか。
いつ頃からか、此処にいるのか。
少女は思い出そうとしたが、薄く靄のようなものがすぐに思考を覆い閉ざしてしまう。
自分には使命があったはず・・・。
使命とは何か?
それは己の存在意義。
存在する証明。
少女は己が意識の波に身を委ね、深淵の黒海を揺蕩う。
黒しかない空間に長方型の映像スクリーンがいくつも少女を中心に現れる。
それらは荒い画像で僅かばかり少しだけ垣間見えた、少女のおぼろげな記憶。
得体無い怪物たちと戦う・・・白い巨人。
巨大な躯体を持つ群がる怪物たちを薙ぎ払う。
映像は無数に現れては消え、現れては消える。
すべて戦いの場面。
戦いの記録。
戦いの記憶。
そう、戦うこと。
それこそが己の存在する証。
そう、それが『私』の使命。
反存在である非生命体『魔物(デモドゥス)』を滅ぼすこと。
そう、それだけが・・・『私』の・・・
少女を囲む戦いの画像が乱れ、引き延ばされ、まったく別の映像が映し出される。
群青の青空。
・・・?
緑群の草原。
・・・これは・・・?
大きな、とても大きな立派な大樹。
・・・知っている・・・?
注ぐ黄金の木漏れ日。
・・・あれは・・・?
その中で軽やかに鈴を鳴らし舞い踊る白い少女。
・・・『私』・・・?
そして大樹の傍らに腰かけ、ハープを奏でる青年。
しかし何故か青年の顔は映像には映し出されない。
映像が途切れ、再び闇が覆う。
・・・今のは・・・
・・・何故か、懐かしい・・・
・・・あの男の人・・・
・・・何か・・・
・・・とても大切な約束をしていたような・・・
流れるのは無音の暗闇。
だが、少女には届いている。
・・・聞こえる。
・・・鈴の音。
・・・聞こえる。
・・・ハープの調べ。
いつの間にか口遊む。
遥か昔に誰かに教わった詩。
少女を仄かに暖かい光が包む。
輝きは徐々に増していき、光の帯びが差し込んだ。
少女は眩しそうに瞼を震わす。
永い永い微睡みから、今—————