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- Re: 魔断聖鎧ヴェルゼファー ( No.19 )
- 日時: 2016/12/12 21:10
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: Lr4vvNmv)
『GYAGAGIYYYYYYYYYYYッッッ!!!!』
辺り一面に奇怪な咆哮を掻き鳴らし、怪物は巨躯を震わす。
そして光の無い闇色の眼をロベルトに差し向けると、その長大な身体を捻りながら物凄い速さで襲い掛かった。
「くっ!? 体が・・・!!」
先ほど全力で走ってしまったのがまずかったのか、身体に力が入らず迫り来る魔物に反応が出来ない。
両腕に少女を抱えたままのロベルトに魔物は巨大な口角を開き、ゾロリと連なる何本もの鋭い牙を覗かせる。
全てがスローモーショーン。
耳に聞こえる音が消え、周りの時間がゆっくりと流れる。
魔物が大きく開けた顎。
どこまでも続くような暗闇。
だんだんと己に近づく。
それはまるで死出を案内する死神さながらに。
————ここまでなのか。
ロベルトは漠然と自身の最後を感じた。
自分の人生の結末はかくもあっけない幕切れだったのかと。
頼れる相棒とあちこちの遺跡を冒険をしたこと。
時には同業者と発掘品を巡りトラブルを再三起こしたこと。
いつか伝説のトレジャーハンターとして偉業を成し遂げて見せると息巻いていた日々。
次々と脳裏に駆け巡る記憶。
それが死の間際に訪れるらしい走馬燈なるものなのかどうかは分らないが。
————俺はこのまま————
眼前を覆う闇が自身を飲み込む————
————はずだった。
「————敵影確認————防護フィールド展開————」
光が差した。
迫る闇に一丈の光が。
白く輝きを放つそれは、大口を開けた魔物にしなやかな指先をかざして凛とした佇まいを施す。
明光する淡い膜が周囲を包み込み壁となり己たちを護っている。
ロベルトは信じられないものを見たかのように見つめた。
さきほどまで腕に抱いていたはずの目の前に立つ少女を。