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Re: 魔断聖鎧ヴェルゼファー ( No.3 )
日時: 2016/12/14 12:13
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: b92MFW9H)


 古の昔より、世界では人と魔の争いが永きに渡り繰り返されていた。
 
 いつ頃か、何故現れたのか、それらはあらゆる大陸を侵略、蹂躙し数多の国々を攻め滅ぼした。

 何処からか来るのか、どうやって生まれるのか、途方も無く無尽蔵に湧き増える邪まなる闇の軍勢。

 慈悲知らぬ心持たない災いたる冷酷なる破壊の尖兵。

 『魔物デモドゥス』と呼称される者ども。

 己の暴虐さと貪欲さを満たす為、命あるものを執拗に狩り出す異形の存在。

 すべてを喰らい、すべてを貪り滅ぼす不浄極まる凶悪な生物。

 抵抗する人類。戦いは熾烈を極める中、人は徐々に疲弊し僅かな大地に追いやられた。

 残され身を寄せる人々。

 しかしその大陸で発見された古代遺跡から先史代の遺物を発掘した。

 人々はそれを魔物に対抗する武器として行使し、迫り来るこれらを撃退する。

 絶大なる力を有す古代の遺産を得た人は蔓延る怪物を駆逐し奪われた人々の生息圏を取り戻すと、失われた自身たちの国を再び起こし勢力範囲図を大きく拡大させていった。

 大陸各地に跋扈跳梁する魔物の数は太古の遺産とそれを躁躯する人々の活躍によって減退された。 

 だが、混沌の芽は完全には根絶されることも淘汰されることも無く、在り続け、今も人域を脅かし続ける。

 いつしか人々は発掘された古代の兵器を魔物を狩る道具、兵器として運用し始めた。

 天より授かりし、神々の武具。

 後に、『鎧機マギナ』と呼ぶようになった・・・・・・。



















 ゴ、ゴゴゴ・・・・・・。

 巨大な鉄扉が地響きを伴い引き開けられる。

 今にも崩れ落ちそうな遺跡の天井からは大量の土埃が舞い、大型工作運搬用鎧機『ガルデン弐型甲式』の鈍重かつ重厚な作業アームが不気味な軋みを悲鳴のように上げる。

 「・・・おいおいおい。大丈夫なのか、このポンコツ。今にもバラバラに分解しちまいそうなんだが」

 ひとつめの馬鹿デカい扉を開けた四角い形状の、武骨な人型機械の露出された操縦席でガタイの良い男が愚痴りながら操縦桿を片手に口元の煙草を吹かす。
 
 「仕方ないだろう。予算に限りがあるんだ。そいつを仕入れるだけでもかなりの資金が入用だったんだぞ。おまけに魔導燃料も最近相場が跳ねあがっているしな」

 作業する人型機械の後方で舞う埃に顔を顰め、眼鏡に付いた汚れを拭う痩身の優男がなだめるように言う。

 「しかしよりによって二世代前の旧式に乗る破目になるとはな。せめて新品とはいかなくても一世代前の『オウガイ無双百式』あたりなら楽なんだが・・・」

 文句を言いつつも往く手を閉ざす錆びた隔壁をアームで掴み、鈍い金属音を響かせて押し開けて再び道を作る男。

 「それは軍用の機体だろ? 汎用とはスペックが根本的に違うじゃないか。それに値段の桁が違う。我儘言わず作業を続けてくれ。ああ、そうだ。ハンス、ひとつ言い忘れたが・・・」

 「ん? なんだ、ロベルト」

 思い出した様に言う眼鏡の男ロベルトに機体の上から返事をするハンス。

 「その鎧機マギナを壊したら、俺たち労働奴隷として砂漠監獄に徴集されることになっている」

 思いきりコケるガルデン弐型甲式。

 盛大に轟音を立てて体勢が崩れたが倒れる直前で両腕のアームが床に着地する。

 「おい、気を付けろ。言った傍から壊そうとする奴があるか」

 呆れたように告げるロベルト。

 「おいいいいいいいっ! なんでそんなことになってんだよっ!! お前どうやってコイツを仕入れやがったんだ!!!」

 ガシャンガシャンと重そうな機体の足を踏み鳴らし間近に歩いてくるハンス。

 「予算に限りがあると言っただろう? 用意していた準備金ではまったく足りなかったからな。それで俺たち二人を担保にその鎧機をレンタルしたんだ。納得したか?」

 ロベルトは眼鏡のフレームをさり気無く掛け直す。

 「・・・どうりで話が旨いと思ったぜ! 俺たちみたいな爪弾きのはぐれ発掘屋トレジャーに美味しい仕事が回って来るものか!! 俺は今回の仕事は降りるぞ!!」

 憤慨するハンス、肩をいきらせ操縦席から降りようとする。

 「いいのか? このままお宝無しで戻ったら監獄往きは確定だぞ」

 「うぐっ」

 冷たく言い放つロベルトにハンスは機体から降りるのを戸惑い躊躇する。 
 
 溜息を吐くロベルトが苦い顔をし、静かに語る。

 「ハンス。・・・俺たちには後は無いんだ。どちらにしてもこの仕事で成果を出さなければ野垂れ死にだ。俺はお前の鎧機乗りの腕を信じている。お前も俺の勘を信じてくれてこの遺跡に来てくれたんだろう? 俺たち二人が本気になれば怖いもんは無い・・・昔からそうだったように・・・」

 ロベルトが不敵に笑みを作る。

 「・・・ロベルト。ああ、そうだ。そうだよな。俺たち二人が揃えば見付けられないお宝は無い! それが俺たち発掘屋『アルティラック』(究極に幸運)』だぜ!!」

 ロベルトの言葉に忘れかけていたかつての情熱を呼び起こされたハンスはニヤリと猛獣を思わせる獰猛な笑い顔を浮かべ口角を吊り上げた。