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- Re: 魔断聖鎧ヴェルゼファー ( No.4 )
- 日時: 2014/12/12 06:48
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: u0Qz.mqu)
発掘屋・・・
古代遺跡に眠る様々な遺物をサルベージすることで生計を立てる者たち。
古代の遺跡からは日々の生活に役立つ日用品の類から用途不明の、現代では解析不能な謎の物体まで多種に亘り発見発掘されており、それらは今現在生きる人々にとって無くてはならないステータスと化していた。
そんな彼らが最も大きな功績を残すため、あるいは巨万の富を手に入れるために日夜この大陸世界を奔走し各地に埋もれているであろう過去の遺産を探し求め、追い求めているものがある。
それが『鎧機』である。
人間と魔物との戦いの最中、劣勢に追い込まれた人間たちが古代遺跡から発見した機械兵器。
金属合金で構成構築され、魔導エネルギーで活動機動するこの画期的な兵器は強靱な魔物共をいとも容易く撃退し、人の世に栄華を齎した。
その後も独自の研究と改良が加えられ時代とともに鎧機は進化していった。
無論元来の役割は戦闘だが、それぞれ扱う人々のニーズに合わせ運搬や建築、移動手段、はては娯楽のための遊戯玩具など多岐にカスタムメイドが施されてあらゆる場所で活躍している。
しかし多くの鎧機が遺跡から発掘され改修されるのが殆どだが、その中には手を付ける事すら適わない処か乗り手を選ぶという特殊なタイプが見つかる時もある。
その特別な鎧機を発掘することこそが発掘屋としての夢であり、またロマンでもあるのだ。
ハンスとロベルトが訪れたこの発掘現場の古代遺跡は東大陸遠方にあるかつて途方も無い科学力で世界を導いたという小さな国があったという伝説がある。
深い樹海に覆われた巨山内部へと至る道は神々を祀る祭壇を思わせ、そこには一際高いゲートとおぼしき残骸が残されていた。
世界中で今も尚発掘される新しい遺跡。
その中の一つとなりえるこの遺跡の発見こそ彼らの発掘屋として腕前と運の良さなのかもしれない。
「しかしロベルト、お前よくこんな遺跡を見つける事ができたな。これぐらいの規模だととうに他の誰かに荒らされてるもんだと思ったんだが、どうやら手付かずみたいだ」
往く手に転がる瓦礫や何かしらの機材群の残骸を作業鎧機で片づけるハンス。
「昔、ガキの頃祖父さんに聞いた話を思い出したんだ。多少うろ覚えだったが入り口の半壊した白いゲートを見て確信した。間違いない、ここが俺たち発掘屋が追い求めて止まない禁断の領域に連なる場所だ」
ロベルトの鋭い眼差しが倒壊した屋内を見やる。
一定の温度が保たれているのか、ひんやりとした感触が二人の青年の内なる心を熱く燻ぶらせる。
ロベルトの祖父は若かりし時分に名の知れた発掘屋として活躍していた。その時体験した色々な冒険譚の話を聞くのが、まだ子供だったハンスとロベルトにとって心躍る時間であり楽しみだった。
その中の一つで不思議な出来事に遭遇した話があった。
遺跡探索を生業としている発掘屋だが今だ大陸各地には魔物が闊歩し、人々の生活圏を脅かし続けている。今は昔よりその絶対数は少なくなったが、現在も発掘作業中に襲われて命を落とす者たちも後を絶たなかった。
故に一人前の発掘屋は己の分身とも言える鎧機を扱う術に長けていなければならない。
その点に於いてロベルトの祖父は卓越した鎧機乗りであり、また魔物との戦い方を熟知したベテランだった。
しかし何事にも完璧というものは無く、ある遺跡の調査中に強力な魔物に襲撃され発掘メンバーはロベルトの祖父を残し全滅し自身もまた瀕死の重傷を負ってしまった。
命からがら逃げだした祖父は未知の遺跡内部に迷い込み、自分が一体どの辺りに居るのかさえ見当もつかない状態だった。
このまま誰にも見つからず朽ち果ててしまうのか・・・。
そう思い諦めかけていた時、彼の前に突然白い人影が現れたのだ。